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“苦難と失意の連続”から日本女子バスケが史上最強に… 「東京五輪で金メダルを」宣言が一笑に付されたアメリカ人指揮官の哲学とは
text by
三上太Futoshi Mikami
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2021/08/08 06:00
フランスを下し銀メダル以上を確定させた日本女子バスケ代表
2004年のアテネオリンピックは、のちに「仙台の奇跡」と呼ばれる、韓国との準決勝をダブルオーバータイム(2度の延長戦)の末に勝利して出場権を獲得。しかし本大会では予選ラウンドの最終戦で女子ギリシャ代表に2点差で敗れ、決勝トーナメント進出とはならなかった。その大会を牽引していたベテランが抜け、翌年のアジア選手権では4位。世界選手権(現ワールドカップ)の出場権さえ逃している。
北京、ロンドン五輪予選での苦難と失意
苦難の道は続く。
2008年の北京オリンピック、2012年のロンドンオリンピックは、アジア選手権でのオリンピック出場権を獲得できず、進んだオリンピック世界最終予選(OQT)ではいずれも敗戦。特にロンドンオリンピックのOQTでは最後の1枠をかけた女子カナダ代表とのゲームに63-71で敗れ、その道を絶たれている。そのカナダ戦で唯一40分フル出場し、チームトップタイの14得点、8リバウンドをあげたのが現キャプテンの高田真希だった。彼女のオリンピックとの戦いはそこから始まっているわけである。
失意に暮れながらも、ここから日本は新たな一歩を踏み出す。のちにWNBAでもプレーすることになる渡嘉敷が日本代表に本格参戦。2013年のアジア選手権で43年ぶりにアジアの頂点に立つと、以降同大会で4連覇を達成している。むろん2016年のリオデジャネイロオリンピックにもアジア1位として出場している。
リオ五輪ではアメリカ相手に大敗
しかしリオデジャネイロオリンピックでは予選ラウンドを4位ギリギリで通過し、決勝トーナメント初戦の準々決勝で女子アメリカ代表に64-110で大敗してしまう。
それは予選ラウンドの最終戦、女子フランス代表との試合を79-71で勝利したことに起因している。実はその試合で日本が13点以上で勝利すれば、日本は予選ラウンドを3位で通過し、優勝大本命と言われたアメリカと準々決勝で対戦することはなかったのだ。勝ちはしたものの、フランスの絶妙なゲームコントロールによってわずか5点及ばず、アメリカとの対戦を余儀なくされたのである。
そうしたさまざまな因縁と悔しさの積み重ねが 女子日本代表の決勝進出には隠されているのだ。
そのリオデジャネイロオリンピック後に、女子日本代表のヘッドコーチに就任したのがトム・ホーバスである。