Number Web MoreBACK NUMBER
「10mの高さだと入水時の衝撃1トン」の飛び込み、大ケガや恐怖感は…? 玉井陸斗14歳がスゴいワケを元五輪選手に聞いた《東京五輪で決勝進出》
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byShidu Murai
posted2021/08/07 13:45
東京五輪で決勝進出を果たした玉井陸斗。14歳の彼を通して飛び込みの競技性を奥深く教えてもらった
そもそもですけど、怖くないんですか?
――……聞いてるだけで怖いです。ケガとしては、脱臼とかが多いんですか?
「脱臼というよりも、骨がすり減っていっちゃう感覚ですね。水に当てるだけでも痛みが出てしまうこともありました。私の場合は肩の可動範囲がすごく広かったので、逆にそれをしっかり止めておける筋肉をつけておかないといけません。どこの筋肉に痛みが出やすいなどを"感じる能力"も大事で、ケアなどもしっかりしていくことがこの競技を長く続けるためには必要ですね」
――肉体面についてお聞きしましたが、続いては精神面についてです。「数メートルの高さからクルっと回って水中に飛び込む」とか、そもそも自分だったら高所恐怖症なんでムリです。
「(笑)。ただ徐々に飛び込む高さは上げていくんですよ。板飛び込みの場合だと、3mの前に1mの板を経験して、そこでイメージを付けていきます。高飛び込みの場合だと、1mよりも低い台なんです」
メダリストでも、昔は10mと聞いただけで泣いたらしい
――スキージャンプの練習に近いのかもしれませんね。
「そうですね。そこからまず踏み切りのイメージをつかんで、そこから1mの台から1回転、3mから2回転、5mで2回転半、7mで3回転、10mで3回転半……と進んでいきます」
――流れだけ追うと、話は簡単に進んでるようですけど(笑)、きっとある程度の期間をもって、段階を踏んでいくんですよね。
「そうですね。やっぱり10mとなると、高さの恐怖から動きが同じようにはならないです。でもその精神面が強いのが玉井選手で、10mになってもまったく同じ動きができるんです。例えばですが、平均台があるとします。マットが用意されていて、そこまで高さがなければ恐怖心を持たず歩けると思いますが……平均台が陸上から10mの位置にあったらどうでしょう?」
――絶対ムリです、想像しただけでメッチャ怖いです。
「ですよね。普段はスッと歩けていたのに、体に力が入ってしまう。玉井選手はそこで力まず、10mという高さでも怖がらずに飛べるのが素晴らしい強みなんです。それこそオリンピックの金メダリストでも、玉井選手の年齢の時は、10mと聞いただけで泣いて上がれなかったという話です(笑)。そういった意味では先ほども言いましたが、コーチがしっかりと玉井選手の成長を見て、10mの高さから飛び込めると判断したことが良かったのだと思います」