マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「今すぐ彼を欲しい球団があるのでは…」スカウト注目の風間球打(明桜)と“甲子園で見られない”5人のドラフト候補投手
posted2021/08/05 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
「今すぐ彼を欲しい球団があるんじゃないか」風間球打(明桜)
「秋田」の決勝の風間球打(明桜)は、見事のひと言だった。
前の日の夕方、青森駅でだいぶ迷った。風間は甲子園で見られるんじゃないか……。
あちこち予選をまわってくたびれてきた体に、悪魔のささやきだ。次で見られる……そんな予断に何度痛い目に遭ってきたか。見ようと思った1つ前の試合で消える。高校野球には「万が一」がいくらでもあるんだ。
風間球打のマウンドを見るのは、去年の6月、花巻東高のグラウンドでの練習試合の時以来だ。
その時は、無理やり高い位置から右腕を振り下ろしているようで不自然に見えた腕の振りが、今は、同じ高さと角度を保ちながら、しなやかに振り下ろされて、そこに「強さ」が加わっている。
楽天・岸孝之投手の東北学院大の頃が、こんな感じの豪快でしなやかな腕の振りだった。
2回の一死満塁を、タテのスライダーでのめらせて三塁ゴロの併殺できり抜けると、逆にいっぺんに「流れ」が明桜に移り、次の攻撃で3点を先取してからは、もう風間球打のペースだった。
エイ、ヤー!の投球じゃないのに、びっくりするようなスピード表示が出る。150キロ台が頻繁に出るのは、大船渡高時代の佐々木朗希(千葉ロッテ)を見ているようだ。翌日の報道では、22球が150キロ台と出ていた。
それでいて、スライダー、カーブ、チェンジアップを構えたミットにきっちり投げきる。フィールディングも牽制も……そして場面によっては、ストレートを使わず、変化球同士の緩急で凡打に打ち取る「技術」も披露して、あっという間に、ヒット3本だけで完封してみせた。
決勝戦らしい二転三転など、何もない。見事なまでに隙のない快投だった。