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「今すぐ彼を欲しい球団があるのでは…」スカウト注目の風間球打(明桜)と“甲子園で見られない”5人のドラフト候補投手
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/05 17:04
7月27日、和歌山大会決勝で智弁和歌山に敗れた市立和歌山の小園健太(高3)
いいものを見せてもらった。青森から帰らなくてよかった。自分の中に、「財産」がまた1つ増えたような気がした。
今すぐ、彼の力がほしい球団だってあるんじゃないか……そう書こうとして、フッと思った。
その前に、まず「全国」だ。コロナで遠征もままならない状況で、この春も「秋田」を制したのに東北大会が取り止めになり、初めての甲子園が、風間球打初の「大舞台」になるはずだ。
甲子園の檜舞台で、強豪、常連を向こうにまわしても、「秋田」と同じピッチングを見せてくれなきゃ、うそだ。
風間球打の甲子園でのマウンド姿。この夏、いちばんの大きな楽しみになりそうだ。
「智弁和歌山に研究された」小園健太(市立和歌山)
明桜・風間球打の「甲子園」が決まって3日後、またしても、大いに迷った。
翌日は、和歌山なのか、奈良なのか。和歌山では、小園健太の市立和歌山が、宿敵・智弁和歌山との決勝戦。一方の奈良は、大器・達孝太の天理高が高田商業高との準決勝だ。
天理は次の決勝でもよさそうなところだが、「普通の公立」だと思っても、夏にベスト4に勝ち上がってくるチームはすべて「強豪」であることを忘れてはならない。
高校野球に「よもや」は付きものなのだ。そうは言っても、「確率」でいえば、市立和歌山のほうが消える可能性が高いのか……結論が出ないまま、どっちに転んでもいいように、泊まりは「大阪」にした。
目覚めた朝まで迷いは続き、結局、エイヤ!と乗り込んだJR阪和線。
「和歌山・決勝」の紀三井寺野球場は、試合前からメラついていた。組み合わせを見ても、どう考えたってこの2強だろう。満を持して紀三井寺にやって来たのは、選手たちより、ファンのほうだったようだ。
智弁和歌山は、小園健太を徹底的に研究したはずだ。箸の上げ下げのクセまで見抜いていたかもしれない。
打ってこない。投げさせている。グラウンドレベルなら一体何度になるのか……炎暑の全力投球に、小園健太の体力が徐々に消耗する。たとえ打ってこなくても気持ちの抜けたボールを投げれば、強力打線にバチンといかれる。気の抜けない投球が、試合後半へのボディーブローになる。
それでもアベレージ145キロ前後の速球がスイングを押し込み、カットボールでタイミングを外して、バットの芯を外す。
「剛」でもいければ、「柔」もこなす。カーブもフォークもあって、投球間隔7秒とも8秒ともいわれる軽快な投球テンポも、打者を戸惑わせ、苦しめる。
1対1の同点にした直後の7回、下を向いたり、ベンチに目をやる回数が増えたかな……と思ったところで、カン!カーン!といかれて2点を奪われる。