鉄人の限界……なのか。8回、遊撃手からの併殺狙いの二塁送球に、スライディングするはずの一塁ランナーが二塁ベースを蹴って駆け抜け、わざと二、三塁間に挟まれ、その間に、二塁ランナーが生還するというトリッキーな走塁で追加点を奪われても、小園健太、ただぼう然とするばかりだった。

達孝太、畔柳亨丞、石田隼都、森木大智……

　その日、奈良では天理高が高田商業に敗れ、大器・達孝太の「高校野球」が幕を閉じていた。

　長い手足を存分にしならせたあの雄大なピッチングフォームと、「甲子園」の舞台で再会できる機会は消えた。

　さらに、中京大中京・畔柳亨丞が「愛知」の準決勝で愛工大名電に敗れて、「センバツ三羽ガラス」と呼ばれた快腕、剛腕たちが姿を消し、同じぐらい楽しみにしていた東海大相模の無敵左腕・石田隼都は、コロナ感染でチームが予選を辞した。

　投手としての才能をすべて兼ね備え、唯一「これから」だった勝負運を自らの力で手繰り寄せよ！と願った高知高・森木大智が、決勝戦で明徳義塾に敗れ、私の中で、この夏の甲子園予選が終わった。

　甲子園予選の終わり……その脱力感の中で数日を過ごし、いくらか気持ちの立て直しができたかなぁ、と思ったあたりで「甲子園」が始まり、また別のエネルギーで、再び心身が満たされる。

　その甲子園で、一度は消えた「三羽ガラス」や「四天王」の新しいバージョンが登場したりするから、いつまで経っても、やはり「甲子園」はやめられない。