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“函館開催”のクイーンS(12年)を制したアイムユアーズが変えた“常識”とは?〈今年は五輪で競馬場が変更に〉
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySankei Shinbun
posted2021/07/31 11:00
2013年、今年と同じく函館競馬場で開催されたクイーンSを制したアイムユアーズ
ジェンティルドンナ、ヴィルシーナとの激戦
こうして迎えた阪神ジュベナイルフィリーズは18頭立てで8番人気とまたもダークホースの扱い。結果、勝利する事は出来なかったが、ジョワドヴィーヴルの2着とまたも善戦してみせた。
「距離が延びるのは良いと考えていたので、正直ある程度やれるだろうという自信は持っていました」
レース後、指揮官はそう語った。
翌12年、3歳牝馬クラシック路線を走るアイムユアーズは、手始めにフィリーズレビュー(GII)を快勝。ところが、クラシック本番では残念ながら同世代に抜けた存在の牝馬がいたため、1冠も戴く事が出来なかった。牝馬3冠全てを制すジェンティルドンナの前に、桜花賞(GI)3着、オークス(GI)4着、そして秋華賞(GI)では6着に敗れてしまったのだ。
「桜花賞ではジェンティルドンナ、ヴィルシーナといった同世代の2強とそれほど差のない競馬(前者と1馬身、後者とは僅か半馬身差)をしていたので、どこかでうまく行けば逆転が出来てもおかしくないかと考えていました。でも、オークスでは体を減らしてしまうなどして、結果的には残念ながら1度も勝てずに終わってしまいました」
〈オークス→クイーンS→秋華賞〉ローテの先駆け
さて、冒頭で記したように13年に函館競馬場で行われたクイーンSを優勝するアイムユアーズだが、実はその前年の12年にも同レースを勝っている。つまり彼女は札幌と函館で行われたクイーンSをいずれも優勝してみせたのだ。とくに12年の勝利は前走がオークスで次走が秋華賞。3歳牝馬がGIの合間に北海道の重賞を走り、見事に制していたというわけだ。
先述した通りオークスで減った体は、クイーンSの時には回復して更にお釣りが出るほどになった。具体的に記せばオークスがデビュー以来最低の444キロという数字だったのに対し、次走のクイーンSを勝利した時はプラス24キロの468キロ。1年後、函館で連覇を果たした際は更に増えて476キロ。このあたりについては次のように語った。
「理想通りに成長してくれました。牝馬でこうやってしっかりと体を増やして成長してくれるのは珍しいと思います」
また、クイーンS連覇についてはこう語る。
「現在でこそ一流馬がクイーンSを使うのも当たり前のようになってきたけど、アイムユアーズの頃はあまりそういうトップホースはいなかったと思います。そういう意味では彼女は時代の先端を行っていたかもしれませんね」
そう語るように、実際、17、18年にはGI馬のアエロリットやディアドラが出走するなど、それまでとは少し傾向が変わって来た感があった。