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“函館開催”のクイーンS(12年)を制したアイムユアーズが変えた“常識”とは?〈今年は五輪で競馬場が変更に〉
posted2021/07/31 11:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Sankei Shinbun
今週末、函館競馬場でクイーンS(GIII、芝1800メートル)が行われる。例年なら札幌競馬場で行われるこの牝馬限定の重賞だが、今年はオリンピックのマラソンが札幌で開催される影響を受け、函館競馬場に舞台を移して開催される。
そんなレースではあるが、過去に1度だけ、やはり函館で開催された事がある。札幌競馬場の改修工事が行われた2013年の話で、優勝したのはアイムユアーズだった。
世間の評価以上に走れる馬
同馬を管理したのは美浦・手塚貴久調教師。この馬のオーナー・ユアストーリーとは2008年当時に2歳だったデイトユアドリームが縁で懇意になったという。
アイムユアーズはセレクトセールの出身。手塚調教師はその第一印象を次のように語った。
「ファルブラヴ産駒で格好良い馬でした。もっとも、芝のスピード競馬にはどのくらい対応出来るのか? という感じもしました」
ところが育成牧場に送られるとその評価はうなぎ上りだったという。そこで早目に入厩。新馬戦が始まってすぐの6月、函館競馬場でデビューした。
「初戦は芝の1200メートルでした。3着に敗れたけど1番人気に支持されたように、調教でもよく動いていました」
結果、2戦目で順当に勝ち上がるとすぐに重賞に挑戦。函館2歳S(GIII)は5番人気の評価に過ぎなかったが2着と善戦してみせた。手塚調教師は後にこの馬の競走生活を振り返った時、この好走が大きかったと語った。
「重賞を2着して賞金を加算出来た事で、その後が楽になりました。これでGI(阪神ジュベナイルフィリーズ)に出走させられる目処が立ちましたから……」
暮れの2歳女王決定戦から逆算してファンタジーS(GIII)に出走させると、これを見事に勝ち上がった。単勝は19.4倍で17頭中の8番人気に過ぎなかったが、世間の評価以上に走れる馬である事を示した1戦となったのだ。