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「田中碧がわざわざドイツ2部に…しかもなぜレンタル?」は的外れです…欧州サッカーの日本人監督が明かす《移籍最新事情》
posted2021/07/27 17:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
オーストリアに日本人監督が誕生した
欧州5大リーグに「日本人監督」が誕生するまでの道のりは、とてつもなく険しい。歴史、文化、言語の壁が立ちふさがり、クラブ側からしたらわざわざ日本人監督を抜擢する理由がない。日本企業がクラブを買収するといったマネーパワーを使わない限り、実現する日は来ないのかもしれない。
だが、そんな中、欧州サッカー界の中でステップアップし続けている監督がいる。16歳でドイツへ留学し、オーストリアサッカー協会で指導者ライセンスを取得したモラス雅輝(42歳)だ。
これまでオーストリアの名門レッドブル・ザルツブルクのスタッフ、浦和レッズのコーチ、ヴィッセル神戸のコーチなどを歴任し、今夏ついにヴァッカー・インスブルックのセカンドチーム(以下、インスブルックIIと表記)の監督に抜擢された。
インスブルックはオーストリア2部の所属で、インスブルックIIはオーストリア3部の所属。つまりオーストリア3部に日本人監督が誕生したのだ。
個人的な調べによると、欧州サッカー界で男子3部リーグ以上の日本人監督はこれまで2人しかいなかった。
2014年に星川敬(現INAC神戸レオネッサ監督)がポーランド3部のコンコルディア・エルブロングの監督を務めた。本田圭佑がSVホルンの実質的なオーナーだったとき、濱吉正則(現九州産業大学サッカー部監督)が2016年から約1年間、オーストリア3部と2部で監督を務めた。
モラスはそれに続く3人目である。
「オーストリア1部のクラブからコーチの話ももらったんですが、僕はインスブルックで女子チームの監督を経験し、取締役会のメンバーも全員知っている。彼らから『ぜひ来てくれ』と熱心に誘われ、信頼を感じて決めました。求められているのは、ヨーロッパで活躍する選手の育成。これまで僕が得たノウハウや経験を伝えていきたいです」
日本人のライバルは「アフリカ、北中米の若者」
欧州における日本人監督の誕生は、日本人選手にとってもメリットになる。早速、移籍が実現した。
6月下旬、サガン鳥栖U-18所属のFW二田理央がインスブルックIIの練習に参加して合格。レンタル移籍されることが決まったのだ。二田は6月に鳥栖でJ1デビューしたばかりの高校3年生。すでに地元の練習試合でゴールを連発している。
日本人監督の存在によって、インスブルックは日本人選手の新たなゴールドマイン(金鉱)になるのか?
そう問うと、モラスは首を横に振った。