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「日本人対決は“負けないぞ”って気合が入るから」 奥川雅也が語るドイツ1部挑戦、堂安律との共闘、代表への野心〈ビーレフェルト完全移籍〉
posted2021/07/27 11:04
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
7月26日、ブンデスリーガのビーレフェルトは奥川雅也の完全移籍での加入を正式発表した。奥川は2020-21シーズン、冬の移籍市場でザルツブルクから期限付きでビーレフェルトに加わり、リーグ13試合1得点。1部の舞台で一定の結果を残し、新シーズンへの足掛かりにした。昨年に続くインタビューでは、オーストリアでの葛藤とドイツでの手応え、チームメートとしてプレーした堂安律の印象や日本代表への思いなど移籍決定前に幅広く話を聞いた。
この3カ月は今までで一番キツかった
――今年の冬にドイツ1部で残留争いに巻き込まれていたビーレフェルトに移籍して、最終節で残留を決めました。シーズンを終えたときの心境は?
「頑張って良かったなっていう気持ちと、少しはチームを助けることができたかなっていう安心感。一番走ったシーズンだったので、やり切った感がすごくありました。この3カ月は今までで一番キツかったので、報われたなって」
――キツかったというのは、残留争いを繰り広げるなかでのメンタル面が、ですか?
「僕は助っ人として来たので、結果を出さなければ、チームメイトから『何しに来てんねん』って思われてしまう。どうしたらチームを勝利に導けるか、ずっと考えていました。(フランク・クラマー)監督も『お前は必ず使う』と言ってくれていたので、その信頼にどう応えるか。なかなか勝てなくてチームの雰囲気が沈みがちになるなかで、どうやって活気づけるか。そんなことばかり考えながらやっていましたね」
――優勝して当たり前のザルツブルクでは、経験できないことですからね。
「ザルツ時代も『自分がやらな』と思っていましたけど、残留争いのチームにやって来て、その責任感がすごく生まれたというか。残留したから言えますけど、いい経験ができたと思います」
――ヨーロッパにわたって6シーズン目。初めてシーズン途中で期限付き移籍を経験しました。決断の背景を教えてください。
「ザルツで出場機会が少なくなってきて、レンタル先を探していたときに、ビーレフェルトが欲しいと言ってくれたんです。かなり運が良かったと思います」
――2部のホルシュタイン・キール(18-19シーズン)でプレーしたときから、ドイツでのプレーに好感触を抱いていましたもんね。
「だから、即答でしたね。早くチャレンジしたくて。(ウーベ・ノイハウス)監督から『ぜひ来てほしい』と言ってもらえたので、いい話が来たなって。残留争いをしていたので、正直、難しいタイミングでの加入になりましたけど。監督から『チームの助けになってくれ』と言われていたので、『結果を残すしかないな』と思っていたところで……」
新監督がザルツのアカデミーで指導していた幸運
――3月にノイハウス監督が解任されてしまった。でも、むしろ新監督になってからのほうが起用されていますよね。
「そうなんです。それもすごく運が良くて」
――なんでもクラマー新監督はザルツブルクにいたそうで。
「ザルツのアカデミーで指導していたんです。僕はちらっと顔を見たことがある程度だったんですけど、向こうは僕のことを知ってくれていて、いきなり先発で起用してくれた。そこからずっとスタメンでしたから。クラマー監督のサッカーはザルツのサッカーと似ているので、周りは戸惑っていたんですけど、僕は理解している。だから、周りに『こうしたほうがいいよ』とか、それこそ(堂安)律にも『このポジションはこう行ったほうがいい。そこを監督は気にして見ているから』みたいな話もしました。監督が代わってから、すごくやりやすくなりましたね」