メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平が“どれだけ打っても”エンゼルスのプレーオフ進出確率は〈6.90%〉!? 2001年のイチローと比較してみたら…
posted2021/07/28 06:03
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
いよいよ東京五輪が始まって、米国でもネットワーク局が恒例の「ドキュメンタリー風番組」、スポーツ専門局が「競技の生中継」をする日々になっている。
過日、競技と競技の合間の時間が待てず、何となくチャンネルを変えていると、メジャーリーグ(MLB)公認ゲームのCMに目が止まった。その冒頭に登場するのはCGの「打者・大谷翔平」と「投手・大谷翔平」。その後にゲームのパッケージの表紙であるフェルナンド・タティースJr.(パドレス)がホームランを打って、ポイッとバットを投げ出すお馴染みの姿が流れ、続いて他のメジャーリーガーが映し出された。
そんな風に最近では米国でも大谷の活躍ぶりが分かるようになったのだが、これほど頻繁に日本人選手が米メディアで取り上げられるのは、2001年のイチロー以来かも知れない。
大谷とイチローに共通するのは、日常への「インパクト」
イチローはマリナーズでメジャー・デビューした2001年、打率.350で首位打者タイトルを獲得し、56盗塁、242安打も同年のメジャー最多を記録して新人王となった。日本人初の最優秀選手賞=MVPもダブル受賞した。当時は言わば「ステロイド全盛の時代」。バリー・ボンズがシーズン73本塁打のメジャー新記録を打ち立てるなどした時代に、攻守に渡って足を使って信じられないプレーを連発し、「スリリングで新鮮な野球だ」と米メディアでも頻繁に取り上げられた。昨年亡くなられたジョー・モーガン氏(元レッズほか)などは当時、こんな風に「イチロー」を語っている。
「イチローのスピードが相手の守備にプレッシャーをかけ、彼のスピードやアーム(腕=強肩のこと)が相手の走塁を自由にさせない。今の野球はただ、Station to Station(塁から塁へ動く)だけ。予想外の盗塁やエンドランを仕掛けず、ホームランや長打が出るのをただ待つだけの退屈な野球になったってことを、イチローが思い出させてくれた。とりわけニグロリーグにルーツを持つ我々のような人間は、彼のプレーに共感できる」
それは大谷が「時速100マイルの速球を投げながら、時速100マイル以上の打球を飛ばす唯一の選手」と語られている熱気とは別のものかも知れないが、誰もが普通だと思っていた日常への「インパクト」という点においては同じだろう。
イチローのマリナーズと大谷のエンゼルスの“違い”
米メディアの大谷と「イチロー初年」の取り上げ方に違いがあるとすれば、それは二人が所属するチームについてだろう。
イチローがMVPを獲得した2001年、マリナーズはメジャー最多タイ記録のシーズン116勝を挙げてアメリカン・リーグ(AL)西地区で独走優勝した。かつてチームを牽引したスーパースターたち――ランディ・ジョンソン、ケン・グリフィーJr.、アレックス・ロドリゲス――を失ったにも関わらず、盗塁王イチローを筆頭にマイク・キャメロン(34盗塁)やマーク・マクレモア(39盗塁)が機動力野球を展開し、とくに俊足でもない指名打者エドガー・マルティネス(4盗塁)やデイビッド・ベル(2盗塁 現在、秋山翔吾外野手が所属するレッズ監督)など、スタメン全員が盗塁したユニークなチームだった。
一方、大谷が活躍するエンゼルスは現地7月19日月曜日の時点で46勝47敗(勝率.495)。これを「勝率5割前後」と考えれば健闘しているようだが、ペナントレースは相手があってのもの。すでにAL西地区の首位アストロズからは10ゲーム差をつけられての4位に甘んじており、大谷の活躍も当然、エンゼルス(の低迷)とは完全に切り離して伝えられている。