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雄星、大谷、朗希…岩手からまた“怪物”が? 花巻東の1年生・佐々木麟太郎のホームランがスゴい 

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西尾典文

西尾典文Norifumi Nishio

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posted2021/07/25 17:00

雄星、大谷、朗希…岩手からまた“怪物”が? 花巻東の1年生・佐々木麟太郎のホームランがスゴい<Number Web> photograph by PABB-lab

豪快なホームランを放ち、堂々と帰還する1年生の佐々木麟太郎(花巻東)。惜しくも甲子園出場は逃したが、将来が楽しみなスラッガーだ

 迎えた1回表、1アウトランナーなしの場面で打席に入ると、そのファーストスイングで、打った瞬間に分かる先制のホームランをライトスタンドに叩き込んでみせたのだ。甲子園出場に向けて重要な準決勝の第1打席で最高の結果を出すだけでも凄いことだが、その打席の内容がまた凄かった。

 打ったボールは92キロのスローカーブ。並のバッターであれば待ち切れずに体勢を崩されるか、何とか呼び込んだとしても、これだけ遅いボールをスタンドまで飛ばすことは容易ではない。ところが佐々木は全く自分のスイングを崩されることがなく、完璧に振り抜いてライトスタンドの後方まで飛ばしているのだ。

 少し古い話になるが、このホームランを見て思い出したのが1997年の巨人とヤクルトの開幕戦だ。広島からヤクルトに移籍した小早川毅彦が、巨人のエース斎藤雅樹から3本のホームランを放った試合だ。

 当時ヤクルトを率いていた野村克也監督が小早川に「斎藤はカウント3-1から緩いカーブを投げてくるのに誰も打とうとしない」と告げたことが2本目のホームランに繋がったと言われている。「3ボール、1ストライク」というカウントは打者が圧倒的に有利だが、そんな状況だからこそプロでも緩いボールを打つことが難しいということがよく表れているエピソードである。

ゆっくりステップして強く振る

 小早川は、野村のデータと“ささやき”によってホームランという結果に繋がったのだが、この日の佐々木を見ているとそんな読みで打ったようには見えない。映像を見返してみても、それまでのボールとタイミングのとり方に変化はない。

 そしてステップした時のトップの形が全く崩れておらず、体の回転をギリギリまで我慢している様子もよく分かる。慎重にステップできるというのは良い打者の共通点だが、ゆっくりステップして強く振るというのは簡単なことではない。そういう意味でも、このホームランは佐々木がパワーだけでなく高い技術も持っていることをよく表していると言えるだろう。

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