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「慣れないことをやらせないこと…」金を目指す稲葉ジャパンの“2つの不安要素”とは? G.G.佐藤“2度の落球”と岩瀬の“乱調”に学ぶ〈北京の教訓〉
posted2021/07/26 17:03
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
AFLO
侍ジャパンの強化合宿を報じる記事に、少し気になる情報が2つあった。
第1にオールスター中に柳田悠岐(ソフトバンク)が右脇腹を痛めたため、別メニューでの練習が続いていること。多少の故障者が出るのは織り込み済みとはいえ、メンバー選出時から「センターは柳田」が大原則だった。稲葉篤紀監督らスタッフは、合宿中のシートノックで鈴木誠也(広島)や近藤健介(日本ハム)にセンターを守らせた。
第2が7月28日のドミニカ共和国戦で、山本由伸(オリックス)を「開幕投手」に起用したことだ。
どちらも妥当であろう。すべてのポジションに本職の控え選手を置いていたら、24人のロースターでは足りない。たまたま、最も手薄なセンターの柳田がケガしたのであって、もしも長期化して誰かが守るとすれば多少なりとも経験のある鈴木、近藤になるのは当然だろう。
山本の先発もしかり。今、最も強い球を投げる投手が、ノックアウトステージを少しでも有利な順位で戦うためにも大事な初戦に投げるのはうなずける選択だ。ただし、気になる理由はこの起用には、山本のリリーフ登板が視野に入っているかもしれないということだ。
今回の侍ジャパン11投手のうち、チームで先発起用されているのが7人、リリーフが4人。最少で5試合だが、最多で8試合ある変則日程と真夏のデーゲームということを考えれば、最多に備えるのは当然である。試合が減れば、余った先発タイプはリリーフに備える。中でも通算リリーフ登板71試合の千賀滉大(ソフトバンク)とともに、同54試合と実績のある山本に期待が集まるのも、これまた当然である。
“メダルなし”の屈辱を味わった北京五輪
侍ジャパンの招集に応じる選手は、必ず「何でもやる」と口にする。その覚悟に疑いの余地はない。しかし、トッププロといえども「やる」という強い思いと実際に「やれる」かは実は違う。それは日本代表の苦い過去に、教訓として残っている。