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「塁がファーストオプション」渡邊、エドワーズらが語る、エース八村の最高の“生かし方”とは? オリンピックで“格上”相手に日本が勝つための〈3つのポイント〉
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/24 11:01
7月18日のフランス戦で攻め込む八村塁。五輪本番でもいかに八村を生かすプレーが出来るに注目だ
オリンピックで日本代表が勝つための「3つのポイント」
ラマスHCはその反省を踏まえて、日本代表が伸び伸びとプレーしていた堅守速攻のスタイルに回帰した。その上で、3つのポイントを挙げた。
1.ディフェンスのレベルを上げる:
W杯後は守備のトレーニングに重点的に取り組んできたし、不動のスタメンだった富樫勇樹ではなく、守備での貢献度の高い田中大貴を先発のポイントガードにする徹底ぶりだ。
2.速攻の質をあげ、回数を増やす:
バスケットボール界の国際大会のルールでは16歳以降に国籍を変更した選手は1人しか登録できない。中国W杯まではBリーグで最もシュートが上手いと言われるニック・ファジーカスが帰化選手として君臨していた。
ただ、彼は走力やスピードを欠く。そこで指揮官は「ファジーカスがいなかったらW杯に行けなかったと思いますし、それを私は一生忘れないで感謝します」と敬意は示しつつ、W杯以降は、このタイミングで帰化が認められたライアン・ロシターとエドワーズの2人に1枠をめぐって競わせてきた。この2人は速攻における貢献度が高い。
3.“3P”を有効に使う:
現代のバスケットボールでは基本なのに、以前の日本は上手く使えていなかった。先のW杯での1試合平均の3P成功数は5.4本で、32カ国中29位タイ。フィジカルや身体の大きさで劣る日本がこれでは、いつまでたっても世界との差は縮まらない。
この課題を克服するためにシューターが生きるようなオフェンスのパターンを増やしてきた。Bリーグを代表するシューターで、昨季のMVPである金丸晃輔も、2020年2月のチャイニーズ・タイペイ戦ではラマス体制でようやく試合に出場させた(2017年7月にラマスHCが就任してからかなりの時間がかかった)。また、アウトサイドを生かすために現在の日本は「4OUT 1IN」という、4人がアウトサイドに構えてからスタートさせる攻撃のフォーメーションを基本にしている。
「リバウンドは、仮に自分が取れなくてもいいんです!」
そして、これら3つのポイントを徹底するために大事なのがリバウンドだ。リバウンドを制すれば、相手の2次攻撃を防げるし、速攻のチャンスは増え、3Pの成功率を上げるために欠かせない「シュートが外れても味方がとってくれる」という信頼感を選手に芽生えさせる。スポーツマンガの金字塔「スラムダンク」でもその重要性は描かれているから多くの人がイメージしやすいはずだ。
そんなリバウンドをめぐるプレーの進化を証明する場面が7月16日のベルギー戦で見られた。
その場面を理解するために、前週の沖縄遠征時にインサイドの要であるエドワーズが語っていた課題を振り返ってみる。
「リバウンドでは各自のマインドが大事だと考えています。『ここで自分がリバウンドに飛び込んでも取れないだろうな』と判断して取りにいかない、というのはダメだと僕は思っていて。仮に自分が取れなくても良いんです! (空中で跳ねているボールを)ティップ(*指先などで触れてコースを変えるプレー)をするだけでもよくて、そうすれば、もしかしたら別のチームメイトがリバウンドを取るチャンスにつながるんですから」
ベルギー戦の第2Qの残り約6分となったとき、あの発言の正しさを証明するような場面があった。
このときは、リバウンドの貢献度の高い八村が、アウトサイドまで出ていってシュートを放った。そのリバウンドに飛び込んだのは、本来であればアウトサイドにいる2人。ポイントガードのベンドラメ礼生と、シューターの金丸だった。最後は金丸が手でティップして、このボールをエドワーズがキャッチした(最終的には、そこからパスを受けた八村が再びシュートを打って、決めた)。