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「本当にサッカーが好きなんだと」異例の監督就任から半年…34歳元Jリーガー林陵平が明かす“東大サッカー部の今”
posted2021/07/30 11:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Yuki Suenaga
東京大学ア式蹴球部で何が起こっているのか? 引退直後に東大ア式蹴球部の監督に電撃就任して話題となった、林陵平氏に話を聞いた(全4回の1回目/#2、#3、#4に続く)。
引退試合直前、学生から直電「一度お話できませんか?」
昨年12月19日、J2リーグ最終戦、現役ラストゲームとなる京都戦の前日。京都駅に着いた時、1本の電話がかかってきた。
「東大ア式蹴球部の監督をやってもらいたいんです。一度お話できませんか?」
Jリーグでプレーした選手が大学の監督に就任することは、それほど珍しいことではない。かつては浜松大学で長谷川健太、筑波大学で風間八宏が指導しており、現在は堀池巧が順天堂大学、外池大亮が早稲田大学、戸田和幸が一橋大学で学生を指導している。
だが、現役引退後すぐの就任、しかも東京大学サッカー部の監督であること、さらに学生が打診から契約締結までまとめたと言うから驚く。
「僕自身、明治大学のサッカー部出身ということもあって、多少は大学のサッカー事情について知っていたんです。ただ、東京大学のサッカー部は正直全然知らなくて、頭が良い大学ってことぐらい(笑)。しかも大学の監督依頼が学生から来たんで本当にびっくりしました」
こう当時を振り返るのは、昨年12月に現役引退をしたばかりの元Jリーガーにして、現在は東京大学ア式蹴球部の監督を務める林陵平だ。
異例のオファーを受け、学生と数度の打ち合わせを行い、模擬練習も実施した。
“スポーツ推薦はなし”で強豪私大と戦う
現在、東大ア式蹴球部は、青山学院大学などの強豪チームも在籍する東京都大学1部リーグを戦っている。今年の目標は、「1部残留」。また、ポゼッションを軸としたチームスタイルの定着も大きなテーマのひとつになっている。
「1部のレベルは高いですし、スタイルを貫いて勝つのは簡単ではないです。サッカーは言うのは簡単ですけど、プレーするのは本当に難しい。それは12年のプロ経験で嫌というほど感じてきたことです。なので、1部で戦うためには理想と現実のバランスを探りながら戦うことが大事だと思っています」
東京大学には他大学にあるような“スポーツ推薦枠”はない。選手はほぼ全員、一般入試で入学してくる。そういう面でも理想と現実のバランスを取りながら、プロ内定者もいる私大強豪と戦っていく必要がある。