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「竜青さんは外れてしまったので」渡邊雄太が見せるキャプテンシーの凄み…“ラストピース”馬場と八村が加わっても忘れてはならないこと
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/16 11:00
7月9日に行われたベルギー戦の第1クオーターにてドリブルを仕掛ける渡邊雄太
足をつっても、“6人”で組んだハドル
例えば、ベルギー戦でのこと。渡邊は第4Qに左足をつって、それ以降は大事を取ってベンチで休むことになった。
NBAの選手は最大で(諸条件についてのルールの説明は省くが)年間28日までしかリーグ外での活動が認められないため、シーズンが終わったあとも渡邊は日本代表にすぐに合流できなかった。今はまだ試合で必要なコンディションを上げているところだ。沖縄での試合は、渡邊にとってはトロント・ラプターズで最後の出場となった5月13日以来の実戦だったことも、足をつった一因だったかもしれない。
そんな試合の70-70の同点で迎えた残り2.6秒でのタイムアウトが終わった後のこと。一般的には、タイムアウトが明けたタイミングではプレーする5人が、ハドル(円陣のように輪になって話をする)を組んでからコートに出ていく。
しかし、この時は“6人”でハドルを組むことになった。
最後のプレーを任された5人に加え、ベンチに座るはずの渡邊がそこに加わっていたからだ。コートに立つ選手と同じテンションで、声をかけ、選手たちを送り出した。
まるでクリスティアーノ・ロナウドみたいだった
他の場面でもそうだった。
ベンチの前にはLEDの広告ボードがあるが、フリオ・ラマスHC(ヘッドコーチ)と同じように渡邊はボードの前に出て、派手なジェスチャーとともに声を出し続けた。シュートが入れば拳を突き上げ、惜しいプレーがあれば頭を抱え、相手に得点を許すような場面では味方に声をかけていた。
まるで、サッカー界のスターであるクリスティアーノ・ロナウドみたいだった。
先日終わったヨーロッパ王者を決める大会であるEURO。その前回大会の決勝戦で見せたロナウドの様子は今でも語り草になっている。最終的に王者となったポルトガルのキャプテン・ロナウドは、あの試合ではケガで前半25分に交代を余儀なくされていた。しかし、ピッチを離れてからもベンチに座ることはほとんどなかった。監督の隣に立ち、試合終了の笛がなるまで、チームメイトを鼓舞したり、指示を送り続けていた。
「どちらが監督なのか、わからないではないか!」
そんなツッコミも入ったが、そんなの彼には関係ない。勝ちたいから行動する。チームを引っ張らないといけないと考えるから、アクションを起こす。ただ、それだけのことだ。
渡邊にとっても同じ。日本代表のパフォーマンスを少しでも向上させるための、リーダーとしての行動だった。