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「竜青さんは外れてしまったので」渡邊雄太が見せるキャプテンシーの凄み…“ラストピース”馬場と八村が加わっても忘れてはならないこと
posted2021/07/16 11:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
JIJI PRESS
7月9日、ベルギー戦の第1Qが終わった。スコアは9-25だ。16点も離される、あまりに苦しい10分間だった。
「弱気になっているぞ! 相手にぶつかっていくぞ!!」
渡邊雄太が声を張り上げた。鬼の形相で、両手を激しくたたきながら。
アメリカで生まれ育ちながら、バスケットボールの日本代表として生きる道を選んだギャビン・エドワーズは言う。
「国内のBリーグでプレーしている選手も、海外でプレーしている選手も、どうやったら苦しい時間帯を脱出できるか、それぞれ経験して知っています。でも、今日は第1Qが終わったあとに、雄太が全員に怒鳴ったことが一番大きかったと思います。あれが、チームに火をつけたと思いますから」
選手1人の力でやれることには限界がある。でも、チームメイト全員のハートを動かせるなら、そこには大きな可能性がある。それこそがスポーツにおけるリーダーの仕事だ。
敗れはしたが、渡邊のキャプテンシーに“光明”はあった
7月5日、東京オリンピック本大会に挑む12人のメンバーが発表された。
このタイミングで比江島慎は、こう語った。
「前回のリオデジャネイロオリンピックの最終予選が自分の中で1つの分岐点というか。オリンピックを身近に感じられたし、手の届くところまで来たかなと感じたので。ただ同時に、世界との大きな差も、最終予選を経験してわかりました。そこから自分の弱点だったり、足りないところを補い合いながら、少しずつ成長も感じ始めていて……」
ただ、本大会に挑む12人の中で、海外組の八村塁と馬場雄大の2人が加わるのは、所属チームなどとの交渉の問題もあり、7月12日から埼玉で行われる五輪本番前最後の合宿の途中から。
こうして、7月5日からの沖縄合宿には10人で臨むことになってしまった。
本大会の12人のうちインサイド専門の選手は4人なのに、中心となる八村がいない。さらに、メンバー最年少である22歳パワーフォワードの渡邉飛勇は、あくまで今後の飛躍を期待される存在だ。実際に、沖縄での3試合の平均出場時間はわずか5分4秒だった。
だから、本番ではあり得ないようなメンバーで戦う時間帯は避けられなかったし、少ない人数で戦っているから、試合を重ねるたびに選手たちの疲労の色も濃くなっていった。
そんななかで行なわれた3試合の対戦相手と結果は以下の通りだ。
7月7日 ハンガリー戦 〇70-58
7月9日 ベルギー戦 ×70-73
7月11日 フィンランド戦 ×71-76
そこで「日本は善戦した」とか、「勝ちきれる強さがないからダメだ」と言ったところで、あまり意味がない。もちろん、全ての選手が参加できていない状況については批判されるべきだが。
では、何に注目すべきか。
最も興味深かったのが、渡邊のキャプテンシーと日本代表との関係だった。そこに光明はあった。