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失われた「なんとかなる」という伝統…無策のまま散ったドイツの悲しい現実と「レーブ後」への期待 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/07/08 17:00

失われた「なんとかなる」という伝統…無策のまま散ったドイツの悲しい現実と「レーブ後」への期待<Number Web> photograph by Getty Images

決定機を外し、天を仰ぐミュラー。イングランドに完敗を喫したドイツは早々に大会を去ることとなった

クラブでは“弱者の戦い方”をしていない選手がほとんど

 イングランド戦もそうだった。予選3試合で無失点の相手との試合は、1点が勝敗を分けると予想されていた。

 実際、ティモ・ベルナー、カイ・ハバーツ、トーマス・ミュラーらがビッグチャンスを迎えた。どれか1つでも決まっていたら、試合の流れが変わっていたかもしれない。でも、結果的に決めきれなかったのだから、さらにチャンスを作り出すことが必要だった。

 この試合、スピードが武器のベルナーがスタメン起用されたが、それなら、彼の長所をもっと生かしたかった。相手の守備が堅いなら、こじ開けるためのミドルシュートだって必要になる。ヨシュア・キミッヒの左足クロスにロビン・ゴセンスが飛び込んだシーンは期待感を抱かせてくれたが、その後、そうしたシーンは一度もなかった。

 ボールを失っても、すぐにボールを奪い返せるという確かな自信があれば、「ミスになるかもしれないけど、うまくいけばビッグチャンスになるかも」というパスやドリブル、シュートにもチャレンジできる。

 しかし、ドイツにはその自信がなかった。まずは失点をしないという狙いや思いが、先に来すぎたのではないだろうか。理解はできる。上手くいかなかったシーンを記憶から消すことは簡単ではないからだ。

 なす術なく完敗した昨年11月のスペイン戦(0-6)が脳裏に残っていても不思議ではないし、ハンガリー戦の2失点はミスからという事実もあったはず。1点が勝敗を分ける決勝トーナメントとなれば、さらにその思いは強くなる。

 ただ残念だったのは、現在のドイツの主軸は1-0の勝利を目指す戦い方が得意ではないという点だ。所属クラブでも、後方で凌ぎ、セットプレーやカウンターからチャンスを窺う“弱者の戦い方”をしていない選手がほとんどだ。

 加えて、ゲームプランのバリエーションはあったのかという点にも疑問が残る。トニ・クロースは「先制点が試合の流れを変えた。それまでは、イングランドにほとんどチャンスを与えていなかったのに」と悔しがったが、果たして0-1とされてからのプランはあったのか?

 少ない時間で手を打つのは難しい。だとしても、イングランドのペナルティエリア内にロングボールが送られているのに誰も競りに行かないのは、そもそもパワープレーで強引に得点を狙う手段を備えていなかった証だろう。あるいは、もう少し早めにセルジュ・ニャブリ、レロイ・サネ、ジャマル・ムシアラ、ケビン・フォラントといった攻撃的選手を起用し、スピード勝負に持ち込む方法だってあった。

 アーリークロスを送ったり、深い位置からグラウンダーのクロスを折り返したりといった方が、ゴールの可能性は高まったのではないかとも思う。何の策も示せずに敗れた事実にこそ、ドイツの悲しい現状が浮かび上がる。

【次ページ】 将来へ向けての土台を作るべき大会だった

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