球体とリズムBACK NUMBER
今のイングランドは逆境にモロくない “不当なPK判定説”もデンマークに逆転勝ち、イタリアとのEURO決勝が必見なワケ
posted2021/07/08 17:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
REUTERS/AFLO
ついにイングランドが欧州選手権の決勝に初めて辿り着いた。
主要大会に範囲を広げても、自国開催の1966年W杯以来だ。6万4950人の観客を集めた聖地ウェンブリーで、勇敢に戦い続けたデンマークを延長戦の末に2-1で下し、EURO初タイトルに王手をかけた。競技発祥地の人々は「フットボールが生まれ故郷に帰ってきた!」と大はしゃぎしている。
PK判定についてデンマーク人記者に訊かれた指揮官は
確かに、決勝点に繋がったPKのジャッジには、議論の余地があるかもしれない。延長前半の終盤に、ラヒーム・スターリングが右サイドからボックス内に侵入すると、ヨアキム・メーレとマティアス・イェンセンが挟み込み、イングランドの10番が倒された。
リプレーでも激しい接触はなかったようにも見えたが、主審の判断にVARも同意。続くスポットキックをエースで主将のハリー・ケインが右中央に蹴ると、一度はGKカスパー・シュマイケルに防がれたが、キッカーがこぼれ球を詰めて、イングランドが逆転に成功した。
試合後の会見では、人格者として知られるデンマークのカスパー・ユルマン監督が、まず敵将のガレス・サウスゲイト監督に祝福の言葉を送った後、「あれはPKではなかったはずだ。このような形で、あと一歩と迫った決勝に進出できなくなり、本当に残念だ。思い出すと苛立ちを覚える」と心境を吐露している。
その後に登壇したサウスゲイト監督は、デンマーク人記者からこの件について訊かれ、次のように答えた。いつもの紳士的なトーンを崩すことなく。
「私にははっきり見えなかったが、多くの人々がこの質問を投げかけてくる。ただし試合のスタッツを見れば、うちの方がはるかに多くのチャンスを作ったことがわかる。カスパーが何度も見事なセーブを披露したように。だからおそらく、試合のバランスを考慮すると、(あのPKは)私たちにふさわしいものではなかったかと思う。もちろん、あれを不当だと感じるあなた方の気持ちも理解できるけれども」