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【ラグビー】ジェイミージャパンの欧州遠征で感じた“経験値の尊さ”…テストマッチの敗戦は「度外視」か、「もったいない」か
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJRFU
posted2021/07/08 06:00
4つのトライを奪うなど健闘を見せたアイルランド戦。勝つチャンスもあったことは確かだ
いま、ラグビー日本代表の評価は難しい。
2015年、2019年と世界に例を見ない長期合宿によって成果を上げたため、「W杯イヤーまではあまり結果を求めなくてもいいのではないか?」というムードがあるような気がするからだ。
つまり、今年は選手の見極め期間と考え、テストマッチの勝敗には多少目をつぶってでも、新戦力の台頭を待つ。
そうした考えに、首肯する部分は私にもある。これは2019年の成功によって生まれたジェイミー・ジャパンとメディア、ファンとの「蜜月」だろう。ある意味、幸せな関係とも言える。
ただし、アイルランド戦はもったいなかったとも思う。
SOの田村優が「勝てるチャンスがあったが勝ち切れず、残念」と話したように、反則やミスで、流れを自ら手放してしまった局面があった。
たとえば前半38分、17対12でリードしている局面では、2回ほどタッチへボールを蹴り出して、試合を切るチャンスがあった。しかし、日本のミスからアイルランドのラインアウトとなり、そこから逆転され、17対19で前半を折り返すことになった。
残り時間が少なく、しかも自陣ゴール前。この判断が正しかったかといえば、結果論になるが、もったいなかった。ハーフタイムでリードしていれば、アイルランドにはさらにプレッシャーがかかった可能性は高い。
各国も苦難する「4年」のサイクル
W杯を基点とした「4年」タームのチーム作りは、日本に限らず難しい。
2018年11月にオールブラックスを破ったアイルランドは、W杯で優勝候補の一角に挙げられたが、そこからチーム力は上がらず、グループステージでは日本に史上初めて敗れ、ベスト8でオールブラックスに敗れた。
当時のヘッドコーチ、ジョー・シュミットは、「2019年に入ってからシックスネーションズで若手を試すなどして、チーム力をアップさせたかったが、上手くいかなかった」とW杯で敗れた後に語っている。
4年というスパンでのチーム作りは、かように難しい。
日本代表に対しても、2023年になるまで、鷹揚に見ていくのが正解なのだろうか?
勝敗を度外視してしまうのも、メディアとしては「違う」気もする。かつて、エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチは口を酸っぱくして、こう言っていたからだ。
「日本人は『全力を尽くせば負けてもいい』なんてことを言いがちですが、勝負の世界では、100%間違った考え方ですよ」
負けを良しとせず、一方で2023年を見据えてチーム作りの進捗状況を見極める。
メディアにとっても、眼力が試される2年間になりそうだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。