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【ラグビー】ジェイミージャパンの欧州遠征で感じた“経験値の尊さ”…テストマッチの敗戦は「度外視」か、「もったいない」か
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJRFU
posted2021/07/08 06:00
4つのトライを奪うなど健闘を見せたアイルランド戦。勝つチャンスもあったことは確かだ
今回、改めて感じたのは、テストマッチで得られる「経験値」の尊さである。
ライオンズ戦で初先発したシオサイア・フィフィタ(22歳)の評価は、正直、芳しいものではなかった。「ディフェンスでいるべきところにいない」など、WTBとFBの連係面で不安を感じさせていたのだが、アイルランド戦ではディフェンスでのコネクションを強め、アタックではトライを記録するなど、存在感を示した。
1週間前と比べて、成長が感じられたのだ。
一方、SHの齋藤はライオンズ戦では後半から登場し、テンポの良い球さばきからアタックのリズムを作り、高い評価を得た。先発したアイルランド戦でも代表初トライを挙げ、肯定的な評価を得たが、先発で見えたものもある。
前半には分かりやすい反則を犯し、ひとつは失点につながり、もうひとつは大ピンチを招いた。また、後半6分には24対19と逆転し、相手ボールを奪ったところで、ボックスキックが手痛いダイレクトタッチとなり、流れを失った。
試合後に齋藤は、「一番印象に残っているのは、自分のダイレクトタッチで流れを持っていかれたことです。テストマッチでは、ワンプレーで流れが変わることを痛感しました」と語っているが、貴重な経験を積んだと言えるのか、それとも高い授業料を払ったと表現すべきなのか。もう1試合テストマッチがあれば、齋藤にはより成長の機会があっただろう。
課題は若手にどうチャンスを与えるか
藤井チームディレクターは、「サンウルブズがなくなってしまったことで、スコッドから外れてしまった選手がプレーする場がない。今後、ジュニアジャパンのように、23歳以下の選手が海外で試合をしたり、チームを作って新リーグに出場させるなど、代表と連係させる場を考えていきたい」と話している。
今後、若手が国際レベルでプレーするチャンスをどう確保するかが課題となるだろうが、枠組みの工夫が必要となりそうだ。
今回のサマーツアー以降、日本代表は9月中旬にメンバーが集結し、合宿に入る(フィットネスレベルが達していない代表メンバーは早めに合流する見込み)。