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バスケ五輪代表の“歴史的1勝”のためには八村、渡邊以外のアタックが必要だ 「W杯が“あんな結果”になってしまったのだから…」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2021/07/02 17:01
国際強化試合のイラン戦に出場した富樫勇樹。日本代表に必要なものを考えている
「我々の課題はディフェンスです」
ディフェンスにおけるもう1つのテーマが、プレッシャーを生命線とした、強度のある守備だ。
W杯の反省をうけて、ラマスはこんな課題を導き出している。
「我々の課題はディフェンスです。ボールプレッシャー(相手のボールに対して圧力をかけること)、ディナイ(自分がマークする選手へのパスコースを阻む守り方)、トライアングル・ディフェンス(コートの片側半分で3選手が三角形をつくるように位置して行なうトライアングル・オフェンスへの守り方)、相手にスペースを与えないこと、相手のドライブに対してしっかり身体を張って止めることなど……」
その意図にそった練習メニューに取り組んできた富樫は、こんな風に感じている。
「相手にできるだけプレッシャーをかけようとしています。例えば、ボールを持っている選手に対しては、良いパスや、良いアングルからのパスを出させないように、相手の視線を少しでも切れるようなディフェンスをしようという話がありました」
「まず、ディフェンスが上手く機能しないと」
そんな守備のテコ入れのために白羽の矢が立てられた人物がいる。前田顕蔵サポートコーチ兼通訳だ。
昨年11月から日本代表の活動にコンスタントに加わっている前田は、Bリーグの秋田ノーザンハピネッツのヘッドコーチを務めている人物だ。彼の指揮する秋田は、2019-20シーズンの決算でトップチームの人件費が10位のチームだ。にもかかわらず、今シーズンは平均失点数も、100回の守備あたりの失点率も、リーグで5番目に少なかった。
年俸の“高い”選手が多いわけではない秋田がそれだけの成果をあげているのは、彼らのディフェンスがそれだけ強力だから。
それを評価したラマスは、この夏の活動に際して前田にこんな言葉をかけたという。
「サポートコーチという名称だが、今回からはアシスタントコーチだと思ってやってほしい」
ラマスがそこまでいうのは、これまで日本代表のアシスタントコーチを務めていた佐古賢一が7月3日から始まるU-19W杯に臨むチームの指揮を執るために、代表チームを離れたことと無関係ではない。
ただ、ラマスは前田のもたらす守備のエッセンスに大きな期待を寄せているのも事実だ。前田自身も、ラジオ番組「あさ採りワイド秋田便」のインタビューで現在の代表での役割についてこう証言している。
「ディフェンスを全面的に任せてもらっているような形です。練習メニューを組んで、それを実際に練習でやって……。(ディフェンスの)すべてを作っているような形なので」
冷静沈着に、課題に目を向けられるキーマンの田中はいう。
「W杯で、日本は相手のトランジション(守備から攻撃に移った直後)へのディフェンスの効率が、最下位だったようなので。まず、ディフェンスが上手く機能しないと、オフェンスの力のある強豪国と戦っていくことは難しいですよね。その激しさをコーチ陣から求められていると思っています」