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ゴルフ界期待の新星ツインズ・岩井姉妹が歩んだ“プロ合格”までの長い道のり…「おめでとうメールは100件ずつぐらい、全部返しました」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byMusashigaoka College
posted2021/07/01 06:00
武蔵丘短期大学の前で撮影に応じる岩井明愛(左)と千怜。7月5日で19歳、今季の残りと来季は大学生プロとしてツアーに参戦する
振り返れば、岩井姉妹のゴルフ道の始まりは、ある意味、偶然の重なり合いだった。
岩井家の父親・雄士は公務員、母親・恵美子は看護師、そして姉妹の2つ年下の弟・光太は、姉妹の母校・埼玉栄高校でゴルフ部に所属している。
十数年前のあるとき、アベレージゴルファーだった父・雄士が練習場に行く際、まだ5歳ぐらいだった姉妹を連れて行った。ゴルフをさせようと思って連れて行ったわけではなく、母・恵美子が多忙をきわめていたこともあって、半ば仕方なく連れて行ったそうだが、2人は大いに興味を示した。
そして、姉・明愛が「クリスマスにサンタさんにゴルフクラブをお願いしたら、ジュニア用クラブのセットが置いてあった」。それが姉妹のゴルフの出発点になった。
それからは練習場に通うようになり、小学2年生のとき、その練習場の永井哲二プロから「筋がいいね」と声をかけられ、指導を受け始めた。
とはいえ、ゴルフ一筋のゴルフ漬けになったわけではなく、2人は中学では陸上部に所属。明愛は女子サッカーにも夢中になった。
そんな姉妹と歩調を合わせ、父・雄士も弟・光太も、みんなで走り、みんなでゴルフを楽しみ、母・恵美子は体調管理や運転手役を買って出た。
両親がゴルフを強いることは決してなく、ゴルフ以外でも何かを強いることは絶対にしなかった。
「本人たちの気持ちが一番。楽しみながら取り組むのが一番です」と、両親は子どもたちの自主性を尊重した。すると姉妹は、高校進学を控えたころ、陸上やサッカーをやめてゴルフを選び、「ゴルフが強い高校、自分が強くなれる高校に行きたい」と切望した。
家族と決めた「進学」と「プロ挑戦」
埼玉栄高校に進学し、めきめき腕を上げて、2020年全国高等学校ゴルフ選手権特別大会(女子の部)では同校8年ぶりの団体優勝を飾った。
「高校3年の秋に2人でプロテストを受けようね」と姉妹は誓い合った。しかし、コロナ禍で2020年のプロテストが2021年の春以降へ延期されることが発表され、姉妹が描いていたプランはすっかり狂った。
それでも姉・明愛は「6月の最終テストに照準を合わせていこう」、妹・千怜は「そのころ私は自信がなくて焦っていたので、延期になったことはラッキーだと思い、絶対に調子を合わせるぞって思いました」と前向きに捉えた。
両親は「親としては最悪のシナリオも考慮に入れた」。
そして、家族みんなで出した結論が、大学進学とプロテスト挑戦を同時に進める道だった。
武蔵丘短期大学を選んだ理由は「4年間の大学生活は長すぎて気持ちが薄れていくのは怖い」「学びたいと思っていることが学べる」「自宅から近い」「特待生としての受け入れで学費免除が経済的に助かる」。
同大学にはゴルフ部があり、キャンパス内にはゴルフ練習場がある。
姉・明愛は「プロゴルファー人生を終えた先のセカンドキャリアのためにも、自分の身体のことや栄養のことを勉強しておきたい」、妹・千怜は「アスリートとしてやっていくためには自分の身体を自分で管理するのは基本だと思う」と考え、どちらも「健康スポーツ」を専攻。日程をやりくりして授業を受け、卒業することを目指している。