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史上初のEURO決勝トーナメント進出に沸くオーストリア 人口890万人の小国が築いた“生き残るための仕組み”とは? 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/06/26 17:00

史上初のEURO決勝トーナメント進出に沸くオーストリア 人口890万人の小国が築いた“生き残るための仕組み”とは?<Number Web> photograph by Getty Images

史上初の決勝トーナメント進出を果たしたオーストリア。躍進の裏には選手を成長させる確かな仕組みがあった

 オーストリアでは「夢を見るのはとても大事だけど、現実的なステップを踏んでいくことがとても大切だ」と、U-15からU-18の選手たちに厳しく伝えているという。

 どれだけエリートでも、プロになれる選手はごくわずか。長期間にわたってプロとして活躍できる選手はもっと少なくなる。だから、オーストリアでは職業訓練を受けたり、学業も大事にしている。

「サッカーだけ頑張って、夢を叶えなさい」では責任放棄になってしまう。

 日本の場合は「超高校級!」とか「スーパー小学生!」という見出しを見かけることもあるが、オーストリアでは違う。もしかすると、あえて取り上げないような仕組みを作ることも大切なのかもしれない。

挑戦者のオーストリアに失うものは何もない

 人口890万人の国が築いた、選手一人ひとりを大事に育て上げる仕組み。そんな環境で育った選手たちがつかんだ歴史的な勝利を見て考えさせられることは、ほかにもある。

 6月26日、決勝トーナメントの初戦で対戦するのはイタリアだ。

 下馬評では圧倒的にイタリア有利。オーストリアはウクライナ戦の前半に上々のプレーを見せたとはいえ、後半は少なからず安定感に欠ける時間帯もあったと指摘されている。イタリア戦では、90分を通して最高レベルのプレーを出せなければ勝機はない。

 それでも、挑戦者のオーストリアに失うものは何もない。

『スタンダード』紙は「イタリア、俺たちが相手だ。イタリアはここ30試合負けなしで、ここ11試合無失点。イタリアが負ければ、歴史的なことになる。でも、夢を見ることは禁じられやしない」と書いた。

 ウクライナ戦で決勝ゴールを決めたバウムガルトナーは「僕らは歴史にその名を刻んだ。でも、僕らの歴史はまだ終わってない」と新たに気合いを込めている。

 一発勝負のトーナメントでは何が起きるかわからない。オーストリアの物語はどこまで続いていくのだろうか。

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