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33歳ナーゲルスマン電撃就任… 6冠王者バイエルンのフリック監督はなぜ今季限りで辞めるのか? フロントと衝突の真相とは
posted2021/04/28 17:03
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
ドイツサッカー界に激震が走った。
4月17日、第29節のボルフスブルク戦に勝利したバイエルンのハンス・ディーター・フリック監督が、テレビインタビューで「今季限りでバイエルンを辞めたいと思っている」と発言したのだ。
フリック監督は19年11月3日に成績不振を理由にニコ・コバチ前監督が解任されると、アシスタントコーチから暫定監督となり、バランスと方向性を見失っていたドイツ王者を見事な手腕で立て直した。
移籍もやむなしという状況だったトーマス・ミュラーをチームの大黒柱として復活させ、レオン・ゴレツカを主軸にまで成長させ、次代のキャプテンとして期待されるヨシュア・キミッヒにも大きな責任を与えた。
その結果、選手全員が所属するクラブのために全力を尽くすようになり、チームの秩序が整った。その後に正式監督になると、ブンデスリーガ、ドイツカップ、ドイツスーパーカップ、UEFAスーパーカップ、UEFAチャンピオンズリーグ、FIFAクラブワールドカップの6冠を獲得し、一躍トップ監督の仲間入りを果たした。
素晴らしい雰囲気なのになぜ辞任希望?
選手たちからリスペクトされ、チームの雰囲気は変わらず素晴らしいものがあるなか、フリック監督はなぜ、辞任希望を口にしたのか。
綻びは突然生まれたわけではない。ドイツメディアが一番の問題として挙げているのがハサン・サリハミジッチSD(スポーツディレクター)との衝突だ。
『キッカー』誌のカールハインツ・ビルト編集長は先日、自身のコラムで「両者の意見の不一致はずっと前より始まっていた。チームプランのアイディアで衝突することもあった。遅くとも昨年の夏頃には最悪の状態となっていた。首脳陣は両者の関係性を修復できずにコントロールを失ってしまった。爆発の危険性は常にあったのだ」と指摘している。
特に問題視されていたのが補強に関する考え方の違いだ。