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EURO絶好調のイタリアに“伝説のペスカーラ”(42試合90得点)を見た…ゼーマン命名「マジコ・トリオ」が躍動
posted2021/06/26 17:01
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
イタリアが、EURO2020グループAを3連勝で首位突破した。
トルコとスイスにいずれも3ゴールで圧勝し、先発8人を入れ替えたウェールズ戦でも危なげなく1-0で完勝した。ロベルト・マンチーニ代表監督も選手も「この代表は全員がスタメン」と口を揃えるほどチームの結束も固い。
国営放送『RAI』と衛星放送『SKYイタリア』が中継したウェールズ戦の合計視聴率は70%を超えようかという勢いで、イタリアはアズーリの快進撃に熱狂している。
アドリア海を臨む中部の港町ペスカーラの人々は、とりわけ鼻高々だ。
開幕のトルコ戦でゴールの競演を見せたFWチロ・インモービレとFWロレンツォ・インシーニェ、それに第3戦の決勝アシストを決めたMFマルコ・ベッラッティ。現代表の主軸をなす3人が、かつて“町のクラブ”でともにプレーしていたからだ。
リーグで最も怖れられた“超攻撃的レジスタ”
年端もいかない彼らはスペクタクルとゴールを積み重ね、2011-12シーズンのセリエB優勝を勝ち取った。その年のペスカーラは、今でも地元で語り継がれる伝説のチームだ。
ペスカーラ近郊に暮らす僕は、当時の彼らを毎週のように追った。間近で取材しながら、「もしかしてこいつはとんでもないチームじゃないのか」と考えていた。
11-12シーズンのペスカーラの攻めっぷりときたら、痛快無比の一言に尽きる。
攻撃サッカーの権化、ズデネク・ゼーマンが率いたチームは、42試合でリーグ最多となる90得点を奪った。総得点2位のレッジーナが63得点だから、その突出ぶりが際立つ。
3トップ中央は9番タイプのインモービレ、左にナポリから武者修行中のドリブラー、インシーニェ。22歳と20歳だった2人は、敵陣でポジションを入れ替えながらスペースを作り、打って叩いて流して、最後にはどちらかがゴールを仕留めた。
EURO開幕戦で、インモービレのアシストからインシーニェが決めたイタリアの3点目は、9年前にペスカーラの本拠地「アドリアティコ」で何度も見た得点シーンそのものだ。
そして2人を操るだけでなく、チームの攻撃全権を担っていたのが、クラブ生え抜きのMFベッラッティだった。