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羽生善治九段「公式戦でこんなに早く…」15歳時の藤井聡太二冠への印象と、通算タイトル99期までの“貴重な瞬間”を写真で回想
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2021/06/27 17:03
今年の王位戦挑戦者決定戦で豊島将之竜王(右)と対局した羽生善治九段。今もなお棋界のトップオブトップの舞台で戦う
写真は、2012年の名人戦第1局の前夜祭に、8人の歴代名人たちが勢ぞろいした光景。
右から佐藤康光王将、加藤一二三・九段、羽生二冠、中原誠十六世名人、森内名人、米長永世棋聖、谷川九段、丸山忠久九段(棋士の肩書は当時)。
もう1つの写真は、森内名人に羽生二冠が挑戦した2012年の名人戦第1局の前夜祭の光景。いつもと違う雰囲気である。実は、2011年に起きた東日本大震災で被災した東北地方の復興への一助として、2012年の名人戦第3局の対局場は、福島県いわき市のハワイアンリゾート施設で行われることになった。そんな縁でフラガールたちがお祝いに駆けつけ、優雅な踊りを披露した。
最後の写真は、2014年の名人就位式で、女優の高梨臨さんが羽生名人に花束を贈呈した光景。高梨さんは携帯電話の待ち受け画面に、羽生の写真を載せるほどのファンだという。
現代の棋士とAIの関係を象徴するかのような場面
羽生は2018年12月に竜王のタイトルを失って以来、「無冠」の状態が2年半も続いている。
そんな羽生について、技術的な衰えを指摘する「限界説」も流れている。羽生自身も「果たして最近の将棋を理解しているのか……。後れを取らないようにしたい」と語り、少し自信なげである。
羽生の全盛期には「羽生マジック」の異名がつくほど、終盤の寄せの強さは圧倒的だった。しかし近年は、終盤のミスで敗れるケースがよくある。
2020年12月に豊島竜王とのA級順位戦の対局の大詰めの局面で、AI(人工知能)の形勢評価値が羽生の勝ちを示しているのに、羽生は負けと観念して投了してしまった。終局後に観戦記者からAIが示した評価値を伝えられると、羽生は複雑な表情を見せた。
現代の棋士とAIの関係を象徴するような場面だった。
「私自身、大山先生の領域に達していない」
羽生は偉大な棋士だった大山康晴十五世名人について、「大山先生の記録はたくさんあり、ひとつでも多く挑んでいきたいです。私自身は、大山先生の領域に達していないと思っています」と語ったことがある。
50歳の羽生が超えていない大山の記録には、次のようなものがある。
50歳以降にタイトル戦に22シリーズも登場。59歳でタイトルを獲得。66歳でタイトル戦の挑戦者。69歳まで順位戦でA級に在籍。
これらの最年長記録を実現できる可能性が高い棋士は、現時点で羽生しかいない。それが羽生のモチベーションになっていると思う。ある意味では、タイトル獲得通算100期は、通過点の記録にすぎないのだ。
羽生九段は今期竜王戦の決勝トーナメントで2勝すると、挑戦者決定3番勝負に進出できる。一方の山には藤井二冠がいて、両者が勝ち進めば大きな話題になる。羽生の今後の活躍に、まだ目を離せない。
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