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羽生善治九段「公式戦でこんなに早く…」15歳時の藤井聡太二冠への印象と、通算タイトル99期までの“貴重な瞬間”を写真で回想
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2021/06/27 17:03
今年の王位戦挑戦者決定戦で豊島将之竜王(右)と対局した羽生善治九段。今もなお棋界のトップオブトップの舞台で戦う
1994年6月。羽生棋聖は名人戦で初めて挑戦者になり、米長邦雄名人を4勝2敗で破って名人を獲得した。
羽生は終局後に「名人は棋士になって一番の夢でした。年間を通じて本局のような将棋を指せれば、それ(五冠を獲得して七冠の可能性について)も夢ではないでしょう」と、願望を語った。
写真は、羽生名人の就位式で、日本将棋連盟の会長で師匠でもある二上達也九段の署名が入った「名人推戴状」を掲げた光景である。
前人未到の「七冠制覇」時に語ったこと
1996年2月。羽生六冠は挑戦した王将戦で谷川浩司王将を4連勝で破り、すべてのタイトルを同時に保持する前人未到の「七冠制覇」を達成した。
羽生は終局後に「一番大きな目標を達成できてうれしいです。七冠を意識している間は、勝敗にこだわった部分があったので、これを機に解放されれば……」と、安堵した様子で語った。
2008年12月。羽生名人は渡辺竜王に挑戦した竜王戦で、3連勝から4連敗する大逆転負けを喫した。将棋のタイトル戦では、初めてのことだった。
栄光の棋士人生をずっと歩んできた羽生は、大きな痛手を初めて負った。しかし2009年1月、開幕した王将戦の防衛戦で「1年を占う試金石になりそうです」と語り、早くも気持ちを切り替えていた。
「《羽生森内》は、俳句の春の季語みたいなもの」
一方で、同じ1970年生まれの羽生と森内俊之九段は、少年時代からライバルとして競ってきた。
両者は名人戦で、保持者と挑戦者を入れ代わりながら、9シリーズも対戦した(そのうち森内が5シリーズを制覇)。
春に始まる名人戦の第1局の前夜祭で、将棋連盟会長として挨拶した谷川九段は、「《羽生森内》は、俳句の春の季語みたいなものです」と形容した。