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羽生善治九段「公式戦でこんなに早く…」15歳時の藤井聡太二冠への印象と、通算タイトル99期までの“貴重な瞬間”を写真で回想
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2021/06/27 17:03
今年の王位戦挑戦者決定戦で豊島将之竜王(右)と対局した羽生善治九段。今もなお棋界のトップオブトップの舞台で戦う
記者会見の当初、藤井が緊張感から言葉に詰まると、羽生は心配そうに横から笑顔を向けていた。そんな様子は、永世七冠の大棋士と朴訥な中学生棋士という対比だった。
なお、同年2月に行われた朝日杯の羽生-藤井戦は、藤井が見事に勝った。
3年の時を経て、2人の立ち位置に変化が
2018年1月の竜王就位式から3年半たった現在、羽生と藤井の立場は大きく変わっている。羽生は、同年7月に棋聖戦で豊島将之八段に2勝3敗で敗退し、同年12月にも竜王戦で広瀬章人八段に3勝4敗で敗退した。
その結果、羽生はすべてのタイトルを失い、1991年に棋王を獲得して以来、27年ぶりに「無冠」となった。
一方の藤井は、2020年7月に棋聖戦で渡辺明棋聖を3勝1敗で破り、17歳11カ月の最年少記録でタイトルを獲得した。さらに同年8月、王位戦で木村一基王位を4連勝で破り、王位も獲得した。
同年9月に王将戦リーグで、藤井二冠と羽生九段が対戦したとき、現状での両者の力関係を表す場面があった。先に対局室に入った藤井は、上座(床の間側)に座ったのだ。プロ棋界では実績や年齢に関係なく、タイトル保持者を上位とするのが決まりである。
過去のタイトル戦から、節目となった勝負を振り返る
羽生が登場した過去のタイトル戦の中から、節目となった勝負を振り返ってみる。
1989年12月。羽生六段は竜王戦で初めてタイトル戦の挑戦者になり、島朗竜王を4勝3敗で破って竜王を獲得した。19歳3カ月でタイトル獲得は、当時の最年少記録だった。
羽生は終局後に「地位の重さについていけるかどうか心配です」と、戸惑った様子で語った。