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「批判される側だったのがリスペクトに変わった」BMXのトップ選手が語る、恐怖心を超えて“やばい技”に挑むワケ
posted2021/06/17 17:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Shuji Goto
彼らはなぜBMXに惹かれ、究めようとするのか。収録後、3人がインタビューに応じた。
東京五輪でフリースタイル・パークが正式種目に新採用されるなど、このところ人気が急上昇しているBMX。20インチタイヤの自転車を操り、技を競い合うこの競技の魅力は何か。
フリースタイル・パークの東京五輪代表である中村輪夢(19歳)、同種目で昨年のジャパンカップを制したベテランの高木聖雄(31歳)、フラットランドで世界大会優勝11回を誇る内野洋平(38歳)の各世代を代表するトップライダーたちを取材した。
「BMXをやるために生きている」
フリースタイル・パークのエース・中村は、BMXライダーだった父の影響で3歳でBMXに乗り始め、15歳でプロになった。19年にはXゲームズを制するなど、世界トップクラスの選手だ。
昨年9月に左足かかとを骨折するアクシデントに見舞われたが、既に回復。5月に茨城県境町で行なわれたジャパンカップで試合に復帰し、貫録の勝利を収めた(高木が3位)。
「足はもう大丈夫です」
笑顔を浮かべた中村は、けがをしていた時期について聞かれると、「BMXに乗れず、すごくつらかったですね。BMXをやるために生きているみたいなものなので、早く前の生活に戻りたいという気持ちでいっぱいでした」と茶目っ気交じりに振り返った。
ジャパンカップではこれまで試合で使ったことのなかった技も成功させた。
「以前と同じ技をやっても(国内では)優勝できると思うのですが、それでは自分的にも面白くない。次の大会はこれを出そうと考えるのがモチベーションになっています」
BMXは恐怖心との闘いでもある。
「怖さは一生なくならないと思う。でも、その恐怖心に勝てたと思える時が楽しい。怖さを乗り越えて成功した時にメンタルが強くなると思います」
大会に来る子供が、小さい頃にしょっちゅう泣いていたのに大きくなるにつれて堂々としていく姿も見てきた。
「人として強くなれると思うし、ちょっとしたけがだったら痛くなくなりますよ」と笑う。