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佐藤寿人が語る“解説者”という仕事の難しさ「今は見たい、知りたいという気持ちの方が強い」今は入浴中もずっとサッカー観戦?
posted2021/06/15 11:01
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
「傍から見ると、サッカー解説者という認識が強いでしょうけど、『いやいや、別にサッカー解説者専門ってわけじゃないんだけどな~』と思ったり(笑)。後輩は面白いとは言ってくれますけど、まだ解説者と言えるほど立派なものでもないですしね」
昨季現役を引退した佐藤寿人はそう謙遜するが、選手目線を生かした理論的に説明する解説には好意的な声も多い。
佐藤が解説を務めた4月29日のJ1第22節・名古屋グランパスvs.川崎フロンターレ戦。川崎の3点リードで迎えた後半36分、自陣に攻め込まれる場面があった。名古屋ボールのスローイン時、川崎・鬼木達監督から名古屋MF米本拓司(背番号2)への守備に対するFW知念慶へ指示が飛んだ。
「知念、知念! 2(米本)の背中から(プレスに)行けよ! 2の背中、2の背中! そっちじゃない!」
この時、佐藤は一連の流れの後、こう補足している。
《相当細かい指示をしましたね。米本の背中から行けっていう指示を出していましたけど、本来であればFWの守備っていうのは、相手を遅らせることで体の正面に対していかなきゃいけないかなっていうふうに思うんですけど、そういった形で、知念は今、ベンチからの指示を『あっ、米本の前に行かなきゃいけないんだ』って感じたと思うんです。でも、そうではなくて鬼木監督は背後から、隠れた形でいって奪えという形の指示をしましたから。そういったところで前線の選手の守備に対する、守備の考え方というのも非常に面白いですね》(中継映像から抜粋)
この解説に、「分かりやすい」「寿人の戦術理解度の高さも醍醐味」とファンから大きな反響があった。
知念と同じ守備のやり方をしていた
「通常ならば聞こえない監督の指示の声があんなクリアに入ってきて。鬼木さんの言葉には、“なるほど、面白いな”と納得でした。すでに試合が決まっているような状況でも緩めない、鬼木さんのプロフェッショナルな姿をなんとか視聴者の方にも伝えたかった。
もし、僕もあの場面にいたら、知念選手と同じ守備のやり方をしていたと思います。あの守備の仕方は間違ってはいないんですけど、鬼木さん的には遅らせる守備ではなく、なんだったらそこでひっかけてもう1度攻撃にでればいいという考えからのあの言葉だったと思うんですよね」