欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
バイエルンの新監督、ナーゲルスマン33歳の“チームのほぼ全員を成長させる”手法とは? ベースには「祖父の教え」が
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/06/10 11:00
33歳にしてビッグクラブを率いることになったナーゲルスマン。指導者としての原点と、その人柄とは?
ところが、ナーゲルスマンはそれまで守備一辺倒だった戦い方を一掃し、適切な距離を保ちながら、前線から精力的にボール奪取を狙うスタイルを選手たちに求めた。試合では「怖がるな」とメッセージを送り続けた。
そうやって戦い方を整理することで選手たちの力を引き出し、勝つための可能性を格段に上げていくことに成功したのだ。
ナーゲルスマンが監督に就任した当時のホッフェンハイムは17位で、残留圏内の15位とは勝点7差。それが10試合後には17位に勝点差7をつけるところまで浮上し、最終的に15位で残留を果たした。
さらに翌年には4位、その次の年は3位と、誰も想像できないことを成し遂げたのだ。
「教授」と呼ばれるラングニックに影響
ナーゲルスマンが影響を受けた指導者の1人が、ラルフ・ラングニックだという。「教授」と呼ばれるラングニックは、ホッフェンハイムとライプツィヒでナーゲルスマンと密接な関係を築いていた人物だ。
守備の基本としてどのようにボールを奪いに行くのか。ボールを失った後はどのように対処すべきか。ボールを奪ったらどのように攻撃するか。「僕にとってベースとなるものを知ることができた」と振り返っていたことがある。
サッカーというスポーツに対する解釈は、自分たちの戦い方をどのように捉えるかにもつながる。ナーゲルスマンは、シーズンを通してうまくいったシステムや戦い方があったとしても、翌シーズンにはそこにメスを入れて、違う選手の組み合わせやシステム、戦術を試す傾向がある。そうした試みに対する明確な答えも持っている。
「どうすればもっと成長できるかこそが大事だからだ。ラングニックがまだ監督だったら、彼もそうしただろうね。相手チームは、いつか僕たちのプレーのやり方に対応してくる。サッカーはどんどん解明されていくんだ。今日のサッカーではスピードが本当に大事だ。さらには、決断へ至るまでのプロセスが非常に重要だ。そうした条件下で、相手が必死に守ろうとするところを打ち砕くためのクリエイティブな解決策を見つける必要がある」