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バイエルンの新監督、ナーゲルスマン33歳の“チームのほぼ全員を成長させる”手法とは? ベースには「祖父の教え」が
posted2021/06/10 11:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
リーグ9連覇を遂げたドイツサッカー界の盟主バイエルンで、来季から監督を務めるのがユリアン・ナーゲルスマン(33歳)だ。
28歳でプロ監督デビューして以降、順調なキャリアを送っている。RBライプツィヒでは昨季、欧州チャンピオンズリーグ(CL)で準決勝進出を果たし、今季はブンデスリーガ2位に導くなど、その手腕を高く評価されている。
今回、ハンス・フリック監督の退任で空席となったところへバイエルンが迎えたわけだが、2023年までライプツィヒと結んでいた契約を反故にすることで発生する違約金は、監督として史上最高額の2500万ユーロ(約34億円)になるとも言われている。
若手だけでなく、ベテランもさらに成長させている
ナーゲルスマンの何が、そこまで優れているのだろうか。
これまでプロクラブで指揮を執ったのはホッフェンハイムとライプツィヒだが、どちらのチームでも戦績だけではなく、抱える選手ほぼ全員をベースから着実に成長させているという点が非常に特徴的だ。
勝つか、負けるかで評価されるプロの世界で、選手を育て、チームをまとめ上げ、様々な戦い方で柔軟に対応しながら結果も出すというのは至難の業だ。
それも、将来性ある若手だけでなく、ある程度の経験を積んでいるベテランもさらに成長させているのだから、なおさら評価されるわけだ。ホッフェンハイム時代には30歳を超えていたサンドロ・バーグナーが活躍を認められてドイツ代表に選出。その後、バイエルンに移籍できたのは、間違いなくナーゲルスマンの指導のおかげだ。
今夏、ナーゲルスマンとともにバイエルンへ移るCBダヨ・ウパメカノは、「彼の下でプレーするのは楽しいよ。(ナーゲルスマンは)ゲームを理解しているし何が求められているのか明確に知っている。彼の下で大きく成長することができた。特に、戦術の部分ですごく助けてくれた。ビデオ映像を何度も見て、僕がどんなところをさらに伸ばすことができるのかはっきりと認識することができたんだ。褒めることしかできない。これからもまた一緒に仕事ができるのが嬉しいね」と、絶賛の嵐だ。
ライプツィヒ時代にナーゲルスマンの下でプレーし、先日、CLで優勝を果たしたチェルシーのドイツ代表FWティモ・ベルナーは、次のように語っていた。
「いつかバイエルンの監督になると思っていた。彼自身も、バイエルンの監督になるのが夢だと言っていたからね。サッカークレイジーとしか言い表せないぐらい戦術的なことをすべて知っている。サッカーに関してすべて説明できるし、選手をどんどん成長させる。だから、バイエルンの監督には他の人がなった方がよかったんだ。バイエルンは、僕らにとってCLではただでさえ危険な相手なんだから(苦笑)」