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バイエルンの新監督、ナーゲルスマン33歳の“チームのほぼ全員を成長させる”手法とは? ベースには「祖父の教え」が
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/06/10 11:00
33歳にしてビッグクラブを率いることになったナーゲルスマン。指導者としての原点と、その人柄とは?
祖父からのメッセージがナーゲルスマンの礎に
サッカーと向き合うときのナーゲルスマンは常に本気で情熱的だが、プライベートではとても自然体だ。ライプツィヒの地元メディア『クロイツァー』のインタビューでこんなことを話していた。
「この前、公園でジョギングしていたんだけど、周りの人たちが『あれ○○じゃない?』とささやき合っていたんだ。ライプツィヒのジャージでイニシャルもJNと入っていたから、そりゃすぐにばれるよね(笑)」
どれだけ注目を集めてもファンへの対応は丁寧だし、自分を隠したりもしない。「僕はオープンで、正直な人間だと思う」と本人も話すが、世間との距離感の取り方も適切だ。
ナーゲルスマンの母親は診療所で助手をしているのだが、ある日、診療所を訪れた年配の女性が4枚の板チョコを手渡してこう言ったという。
「テレビで見たのよ。これ、あなたの息子さんに」
ナーゲルスマンは地元記者に対し、嬉しそうにそう話したそうだ。微笑ましい話だ。
そんな姿勢は、祖父の言葉が少なからず影響しているのかもしれない。ナーゲルスマンの祖父はことあるごとに電話をかけてきて、最後には必ずこう伝えるという。
「謙虚でいなさい。いつでも地に足をつけているんだよ」
大切な祖父からのメッセージは、ナーゲルスマンの礎となっている。
UEFAクラブランキング1位のバイエルンで監督をするというのは、これまでとは環境も周囲からの注目度も全然違う。それでも、刺激的な挑戦としてナーゲルスマンは勇敢に向き合っていくのだろう。バイエルンにどんな化学反応をもたらすのか。世界中のサッカーファンが楽しみにしているはずだ。