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香川真司をちゃんと「カガワ」発音で呼んだナイスガイ… 速くて巧くて強くて優しい万能CBファーディナンド伝説
posted2021/05/22 17:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
彼らがもう20年ほど遅く生まれていたら──と、妄想するケースがしばしばある。
そのひとりは、パオロ・マルディーニだ。1990年代、ACミランの左サイドバックとして一時代を築き、1対1の強さと効果的なオーバーラップは世界水準。また、ボールだけをものの見事にからめとるスライディングタックルも天下一品だった。
あのディエゴ・マラドーナに「実に厄介な男」と言わしめた伝説の名手である。
同じ時代を生きたアレッサンドロ・ネスタもフットボールの歴史に名を刻む優れたDFだ。ラツィオとミランで長く活躍した機動力豊かなセンターバックである。もちろん空中戦も強い。対峙した相手との間合いの計り方も絶妙で、超一流のアタッカーたちが魅入られたようにネスタのゾーンにおびき出され、自由を奪われていた。
いま、彼らが旬を迎えていれば、マルディーニ・ロールとかネスタ・ロールと称されて世界中の戦術愛好家たちを虜にしていただろう。
あくまで私見だが、近代フットボールで世界一のDFと言われるリバプールのビルヒル・ファンダイクでさえ、ネスタやマルディーニの域には達していない。
1990年代中頃に言われた「あいつだけは……」
1990年代の中頃だったと記憶している。知人のイギリス人レポーターに「あいつだけは見ておいた方がいい」と、ひとりの選手を強く推された。
リオ・ファーディナンドである。
名前は知っていた。「次代のイングランド・フットボールを担う逸材で、ウェストハムユースが産んだサラブレッドのひとり。センターバック、右サイドバック、アンカーに加え、3バックの右ワイドも器用にこなす」との触れ込みだった。
21世紀にマルチは存在するが、20年近く前のイングランドでは稀有な存在だった。
とはいえ、イングランドのメディアは自国の選手を過大評価する傾向にある。「まぁ、話半分くらいで聞いておこう」。それほど期待していなかったのだが……。