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「これやったら戦いようがあるな…」 中谷正義が“ウクライナの怪物”ロマチェンコ戦に誓う“余裕の勝利” 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/05/29 17:01

「これやったら戦いようがあるな…」 中谷正義が“ウクライナの怪物”ロマチェンコ戦に誓う“余裕の勝利”<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

中谷正義は“ウクライナの怪物”ロマチェンコ戦を前にこの試合への思いを語った

「これでプロのボクサーと言えるのか?」

 中谷は2019年7月、世界チャンピオンになる直前のロペスとIBF世界挑戦者決定戦で対戦し、判定負けながら善戦した。その後、一度は引退を発表したものの昨年になって復帰を決意。同年12月にラスベガスに乗り込んで、世界王者候補のフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)を相手に、2度のダウンを奪われながら劇的な9回逆転KO勝ちを収めたのである。これがトップランクの興行だった。

 それにしてもわずか半年ほど前に引退状態だった選手が一転、ボクシングの聖地でビッグチャンスを手にするのだから人生は分からない。中谷はロペスに敗れ、引退を決意した時の理由を次のように説明する。

「ずっと世界チャンピオンになることを目標にしてやってきました。それがロペスに負けて、次のファイトマネーがいくらになるのかと考えると、東洋太平洋王座も手放していましたし、20万円くらいにしかならない。それで果たしてプロのボクサーと言えるのか? そう考えたら辞めるという選択が現実的だと思いました」

冷静に考えると、引退は現実的な選択に思えた

 中谷はプロボクサーとしてファイトマネーで生計を立てていた。ウェブサイトを制作する会社でアルバイトもしていたが、あくまでそれは保険という意味合いだった。ところがファイトマネーが大きく目減りしてしまうと、アルバイトのほうがメインの収入になってしまう。

 加えて無敗だった中谷は一度でも負けたらボクシングを辞めようと考えていた。そしてロペスに負けた。ライト級を含む中量級以上のクラスは軽量級と比べて、日本や東洋太平洋王者と世界タイトルマッチの距離が遠い。現実を客観的に見れば、ライト級の自分に再び大きなチャンスが巡ってくるとは考えにくい。だから引退する。公私の状況を冷静に考えると、それが現実的な選択に思えたのだ。 

【次ページ】 「今辞めるのも、5年後に辞めるのも変わらんで」

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