“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
開幕から13戦無敗、J2新潟がこれほど強い理由… キーマン高木善朗&本間至恩を活かすアルベルト監督の手腕とは
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byALBIREX NIIGATA
posted2021/05/14 11:00
左サイドで躍動し、好調の新潟を牽引するMF本間至恩
そんなアルベルト監督のサッカーにおいて、水を得た魚のように特徴を最大限に発揮しているのが前述の2人だ。
トップ下に入る高木の役割は攻撃を円滑に進めるための潤滑油。ボールキープ力に長け、パスとシュートもうまく、かつ瞬間的なスピードに秀でている彼の特性を最大に活かすためには、フリーマン的な自由度が必要だ。これまで彼はサイドハーフやボランチでの起用が多かったが、役割が限定的になる。そこでアルベルト監督は高木に一定の自由を与えた。
1対1に無類の強さを見せる本間はドリブル技術だけでなく、先をしっかりと予測し、直前で判断を変えられる高性能な頭脳とクイックネスを併せ持つ。いかに勝負できる場面を増やせるか。彼の長所を引き出す狙いはそこにあった。
高木の自由度を高め、左サイドの本間には積極的に勝負させる。アルベルト監督はこの2つのタスクをチームの共通理解として浸透させた。そこに今季の新潟の強さの要因があると見ている。
ベテランDF千葉和彦の獲得
今季、センターバックにビルドアップ力に長けたベテランDF千葉和彦を新戦力として獲得。彼がボールを持った時に両サイドバックが高い位置に張り出して幅を取ることで、両サイドハーフが中央のスペースに入り込み、高木へのマークを分散させている。高木がボールを受けた瞬間や右サイドにボールが入った瞬間には左サイドの本間のマークが外れ、1対1の局面でボールを受けやすい状況を作り出している。
最終ラインは千葉と守備力の高いDF舞行龍ジェームズのコンビがファーストチョイスだが、ビルドアップ能力とパスセンスのあるDF早川史哉と千葉を組ませることで、より分厚い攻撃を仕掛けられるというオプションも用意。最終ラインの組み合わせ、ダブルボランチのポジショニング、両サイドハーフのポジショニングと連動する形で、縦へのパスコースを構築するなど、常に前への圧力を維持した状態でゲームをコントロールしている。チーム内でやるべきこと、方向性が明確になっているのはここまでの試合を見れば明らかだ。