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【Jリーグ誕生から28年】開幕戦で勝てずに2年の苦戦…“Jリーグのお荷物”と言われた「2つのクラブ」とは?
posted2021/05/15 11:03
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
5月15日は、日本サッカーの歴史が動いたメモリアルデイだ。1993年のその日、Jリーグが開幕したからである。
日本サッカーの聖地と呼ばれる国立競技場のピッチでは、ヴェルディ川崎と横浜マリノスが激突した。NHK総合での生放送に合わせて、キックオフは19時30分に設定された。実際には19時29分に、試合開始のホイッスルが鳴った。
ピッチ上には加藤久、木村和司、水沼貴史といった80年代の日本代表を支えたベテランがいた。さらにはカズこと三浦知良とラモス瑠偉に都並敏史、柱谷哲二や井原正巳ら現役の日本代表も並ぶ。マリノスには元アルゼンチン代表FWのラモン・ディアスが加わっていた。プロ化前から日本サッカーを支えてきた選手と新時代の日本サッカーを牽引していく選手、さらには世界的なスーパースターが混在するなかで、Jリーグはスタートしたのだった。
ところで、15日に行なわれたのはヴェルディ対マリノスの1試合のみである。残る4試合は、翌16日に行なわれている。
W杯のスターが同じピッチに「鹿島vs名古屋」
そのなかで注目を集めたのは、鹿島アントラーズ対名古屋グランパス戦だろう。鹿島は元ブラジル代表MFジーコが、名古屋は元イングランド代表FWガリー・リネカーが背番号10を着けていた。82年のスペインW杯で世界を魅了したサッカー王国のレジェンドと、86年メキシコW杯得点王が同じピッチに立つのだ。Jリーグ開幕に相応しい一戦である。
戦前の予想は分かれていた。Jリーグのプレ大会として行なわれた92年のヤマザキナビスコカップで、両チームは準決勝まで勝ち上がっていた。10チームによる総当たりリーグ戦の成績は、名古屋が6勝3敗で鹿島は4勝5敗だった。
直接対決はと言うと、アウェイの鹿島が7対1(!)で大勝していた。ただ、この時点ではリネカーが加入していなかった。
実際にチームに合流したリネカーは、ブラジル人MFジョルジーニョの存在に頼もしさを感じていた。「彼みたいなピンポイント・パサーがいるとは思わなかったよ」と、ホットライン形成に自信をにじませた。リネカーが加わったチームへの期待値も込みで、名古屋を推す声も聞こえていた。
ところが、試合は鹿島の圧勝に終わる。ジーコがハットトリックを達成し、彼がフラメンゴから連れてきたアルシンドが2得点を記録し、5対0で名古屋を粉砕するのである。