濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
『キン肉マン』作者が還暦で柔術習得中! 「もういらんと言われるまで続けたい」【全キン肉マニアが泣いたエピソード秘話も】
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/04/27 11:00
『キン肉マン』作者である嶋田隆司氏(左)とジム代表の宮川博孝氏。選手や自身の体験を作品にも生かしているという
伏線を回収するマンガばかりじゃなくていい
セカンドシーズンの連載期間は、すでにファーストシーズンを超えている。“新しいマンガ”として『キン肉マン』を知り、さかのぼってファーストシーズンを読み始める読者も多いそうだ。また宮川によると「お父さんが全巻持ってて『キン肉マン』が好きになったという選手もいますね。読者の層が幅広いんです」。
弱小キャラが復活したり、過去には描かれなかった秘話が掘り起こされるセカンドシーズン。それを可能にしているのがファーストシーズンの“余白”だ。嶋田が意識するのは勢いや意外性。整合性はあえて二の次にしている。
「今は伏線があって、それをしっかり回収するようなマンガが主流ですよね。でもそういうものばかりじゃなくていいと思うんですよ。“ゆでたまごだけ、なんであんなメチャクチャが許されるんだ”って言われるんですけど(笑)、マンガって本来そういうものじゃないかなって。そこは梶原一騎先生の影響も大きいです」
設定やストーリー上の矛盾、強引な飛躍があるから、後になってそこを埋める「秘話」を創造することもできる。最初から設定や展開をガチガチに決めていたら、今の『キン肉マン』の面白さは生まれなかった。嶋田は読者からの反応、ツッコミまで含めて楽しみにしているようでもある。
酒の肴になるようなマンガを
「ファーストシーズンを描いている頃、方向性に悩んでいたら編集者から言われたんです。“君たちもマンガ好きだから経験あるだろうけど、子供の頃に好きだったマンガを肴に飲みながらゲラゲラ笑ったりするのが楽しいんだよ。そんなマンガを描くといい”と。今でもその時の気持ちから変わってないですね」
作中、キャラクターのデザインが変化していくことも珍しくない。単行本化の際に統一するという方法もあるのだが、ゆでたまごはあえてそうしていない。
「だって“あっ、絵が直ってる”となったら読んでくれてる人からしたら寂しいかもしれないじゃないですか」
読者にとっての“あの時読んだキン肉マン”をそのまま保存しておけば“肴”にもしやすい。読むだけでなく語ることで完成するのが『キン肉マン』なのかもしれない。ここ数年は、作品がSNSで“語られる”ことも増えた。
「今はWEB連載で毎週月曜、日曜深夜0時の更新なんです。その時間になるとバーッと感想が出てくる。それを読むのが楽しみでね。“面白かった”だけじゃなく“いいプロレスだった”みたいな声もあったりして。みんなの声を聞いて、期待に応えたいと思うし“さて、どう裏切ろうかな”なんて考えたりもしますね」