濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
『キン肉マン』作者が還暦で柔術習得中! 「もういらんと言われるまで続けたい」【全キン肉マニアが泣いたエピソード秘話も】
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/04/27 11:00
『キン肉マン』作者である嶋田隆司氏(左)とジム代表の宮川博孝氏。選手や自身の体験を作品にも生かしているという
「いろんな反応を知った上でやってます」
1980年代に大ブームとなった『キン肉マン』。1997年に次世代の活躍を描く『キン肉マンII世』がスタートし、それが終わると“初代”の物語が再開された。現在も続くセカンドシーズンである。WEBでの連載で読者を歓喜させたのは、かつて脇役、負け役だった超人たちの復活だ。ファーストシーズンではたった3コマで負けたレオパルドンがセカンドシーズンで見せた意地には全キン肉マニアが泣いた。筆者も嶋田にインタビューしながら「レオパルドン最高でした!」と言わずにいられなかった。嶋田はそういう声を何度も何度も聞いて、新たなアイディアを練っている。
「ファーストシーズンの時もファンレターを読んではいたんですけど、なかなか読者の声を拾う余裕がなかった。展開の中で、どうしても噛ませ犬にしてしまう超人が出てくる。セカンドシーズンは格闘家のみなさんだったりネットだったり、いろんな反応を知った上でやってます。レオパルドンもじっくり描いてみるとカッコいいんですよ」
セカンドシーズンは「プロレスに戻ってきてますね」
超人たちの闘いぶりにも変化がある。ファーストシーズンはプロレス黄金時代とリンク。たとえばテリーマンがテリー・ファンクにインスパイアされているのは明らかで、使われる技もプロレスのものが多い。
90年代から00年代にかけての『II世』はPRIDEの隆盛と同時期。超人たちも総合格闘技のテクニックを使うようになった。そしてセカンドシーズンでは「またプロレスに戻ってきてますね」と嶋田。
「ここ数年、またプロレスが盛り上がっているというのは大きいですね。それに今は、一時期のプロレスが派手で危険な技に走りすぎた反動なのかシンプルな技を大事にしている。同時に我々にも変化があって、中井くん(作画担当の中井義則)の絵がどんどん洗練されてるんです。バックドロップとかブレーンバスターといった基本的な技でも、今の中井くんの絵なら十分に説得力がある」
結果、セカンドシーズンでは格闘技テクニックとプロレスの迫力が絶妙に融合。といって漠然とした「技」ではなく、プロレスを長年見てきたからこそのこだわりもある。
「この超人のブレーンバスターはキラー・カール・コックスのかけ方で、バックドロップはジャンボ鶴田の“ヘソで投げる”フォームで、と細かく指定してます。そう伝えれば中井くんも理解してくれる。同じものを見てきたから共通言語があるんです。僕の原作は中井くんじゃないと理解不能かもしれない(笑)」