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【引退】五郎丸歩と過ごした不思議なトゥーロンの夜…語り合ったジャパン、早稲田、ラグビーのこと「飲むの遠慮しないでくださいよ」
posted2021/04/26 17:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Itaru Chiba
それは「五郎丸」をめぐっての不思議な旅だった。
2016年11月19日。日本対ウェールズをカーディフで取材した私は(この試合は74分に日本が30対30と追いつき、敵地で勝ってしまうんじゃないかと本当にドキドキした)、美食の街であるカーディフに後ろ髪を引かれつつ、その日のうちにロンドンへと戻った。
翌朝、五郎丸歩がプレーしていたフランスのトゥーロンへと向かうためである。
11月20日、ロンドンのヒースローからマルセイユへと飛び、車でトゥーロンへ向かう。人口およそ16万人の街に入って驚いたのは、そこかしこにクラブのフラッグがあり、キオスクにはボールが売られていて、投宿したホテルのロビーにはなんとラインアウトの写真がデザインされていた。
ここトゥーロンはラグビータウンだった。
「ようこそ、こんなところまで」
その夜、五郎さんが取材場所に指定してきたのは、トゥーロンの中心部から車で30分以上かかる町はずれのお店だった(この日のことを思い出すと、「五郎さん」と書いた方がしっくり来るので、そう書かせていただく)。
その店は人里離れた場所にあり、比喩ではなく、本当に暗闇にお店の明かりが浮かんでいた。そこはトゥーロンのラグビー愛好家が集まる店であり、フランスでありながらパブカウンターのようなものもあって、ジャージを着た男性たちがビールとワインを楽しんでいた。
そこに、五郎さんが入ってきた。
「ようこそ、こんなところまで」
笑顔で挨拶し、昨日の日本対ウェールズ戦に話は展開した後、自然と五郎さんがW杯後の日々を振り返る恰好になった。