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「失礼な話だよ」落合博満42歳が巨人フロントにキレた「落合はおしゃべりが過ぎた」ナベツネは猛反撃…落合が拒否した巨人“残留オファー案”
posted2024/10/30 11:02
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
KYODO
あれから30年。巨人にとって落合博満がいた3年間とは何だったのか? 当時を徹底検証する書籍「巨人軍vs.落合博満」が発売され、即重版と売れ行き好調だ。
その書籍のなかから、「落合博満vs.清原和博“FA移籍騒動”」を紹介する。「落合解雇」か「落合残留」か……退団までの1カ月間は巨人フロントとの戦いの毎日だった。【全3回の中編/前編、後編も公開中】
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落合博満がキレた「失礼な話だ」
「フロントの発言を知って、特別に大きな驚きとかショックというのはなかった。ついにきたか、という感じ。こいつら、馬鹿だな、何の権限があってやっているのかなって。でも、俺はすぐに腹をくくったんだよ。いくら渡邉社長と長嶋監督が俺を必要としてくれていても、契約交渉の当事者であるフロントがそこまで俺を外したいと思っていて、こういうふうに問題が表面化したからには、もうジャイアンツと契約することはないだろうと」(不敗人生43歳からの挑戦/落合博満・鈴木洋史/小学館)
実際、落合はオーバーホール中の吉奈温泉で巨人の同僚選手たちに「今まで世話になったな」と別れの挨拶をしていたという。だが、14日夕方に報道陣に向かってぶちまけたオレ流の「失礼な話だ」という怒りのコメントに、巨人フロント陣は焦る。緊急会議の末、同日深夜、午後10時45分に紀尾井町のホテルニューオータニの玄関脇で、深谷代表が「契約は“白紙”と言ったが、“解雇”とは言ってない」と苦しい弁明とともに「落合残留」を発表した。
「阪神はタテジマをヨコジマに変えてでも…」
それを受け、午後10時55分に再び都内の自宅前で、「残留と言われても、条件も知らされていない。これで契約更改の場につけるということがわかった。一度はクビだったんでしょ」と語るオレ流。騒動は沈静化すると思われたが、打撃コーチ兼任の年俸4億500万円の現状維持での残留案が報じられるも、「飼い殺しにされるのはご免だ」と怒りはおさまらなかった。この混乱の渦中、11月15日には清原が阪神との初交渉を迎える。2年連続の最下位に沈むチームを改革するために、どうしても柱になるスター選手が欲しかった吉田義男監督は、交渉解禁日の朝に清原の自宅へ電話を入れていた。のちに明らかになるが、このときの阪神は総額30億円超えの10年契約に加え、将来の監督就任を含めた終身雇用という前代未聞の大型契約を提示したのである。巨人とは比べ物にならない熱量と好条件に、交渉後の清原の表情も明るかった。
「吉田監督から“阪神はタテジマのユニフォームをヨコジマに変えるくらいの気持ちだ”と言っていただいて……。部屋が暑かったせいもありますけど、十分すぎる熱意で汗が出てくるような状態でした」(週刊ベースボール1996年12月2日号)