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「もう辞めます」ダルビッシュ有がマイナー球場の片隅で“絶望”をつぶやいた日
posted2020/11/17 06:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
今年、よく思い出したシーンがある。
2年前の2018年8月19日、インディアナ州サウスベンドにあるマイナーリーグの球場の片隅でのこと。英語会見を終えたカブスのダルビッシュ有投手は、米国人の記者がバラけて、日本人記者が囲もうとしたその瞬間、確かにこう言ったのだ。
「もう辞めます。引退します」
「6年総額1億2600万ドル」の重圧と責任感
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当時の彼は、原因不明の右腕の痛みと闘っている真っ最中だった。
DL(故障者リスト 現IL=負傷者リスト)に入った選手は通常、患部を治療しながら安静→キャッチボール→投球練習→ライブBP(実戦形式の投球練習)→マイナーリーグでのリハビリ登板というプロセスを経て、メジャーリーグに復帰する。5月の終わり頃に右腕の違和感を訴えた彼もそのプロセスを経て7月上旬の復帰を目指したが、最後の段階、つまりマイナーでのリハビリ登板(6月25日)で5回1失点と好投した直後、こんな風に漏らして1度目の復帰プロセスが頓挫していた。
「イニングの間に5分、10分と時間が開くと(患部が)冷えてしまうというか、どうしても、イニングの前に5球とか6球投げる時に結構、(痛みが)くるんで、100パーセントとは言えない。いろんな事やってんだけどなかなか……何をすればいいのか分からない。奥さんなんかは痛いんだから仕方ないじゃないと言ってくれるし、昔の自分だったら痛いから投げられへんしってなるけど、長い契約してるし早く戻らなきゃという気持ちもあって邪魔している」
日ハム時代には骨が折れても投げていたぐらい痛みに強かった人が、「キャッチボールも、痛くて軽くしかできない」とはっきり言う。それでも同年2月にカブスと交わした6年総額1億2600万ドルの契約の重圧と責任感から、何が何でも復帰しようとしていた。
最初(5月)の診断では「右上腕三頭筋の腱炎」。MRI検査の結果は「(筋)組織に損傷なし」だった。ところがその後も痛みが不規則に発生し、本人曰く「(患部には)いつも何かある」という状態。後に自身のYouTubeチャンネルで明かした背骨コンディショニング(仙骨枕を使うもの)をやって体調自体は良くなったというが、右腕の違和感や痛みだけはずっと取れなかった。
1度目の復帰を断念せざるを得ない状況になった後、レンジャーズ時代にトミー・ジョン(右肘の内側側副靱帯の再建)手術を進言した医師が再検査を行い、今度は「右肘のインピンジメントと炎症」と診断された。