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桑田もダルビッシュも大谷も...今更聞けない「トミー・ジョン手術」の“トミー・ジョン”って、だれ?
posted2021/01/26 06:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
1月初旬のことだったであろうか。AP通信の記事で「トミー・ジョン」の見出しが目に付いた。
誰かが、また肘の手術を受けるのだろうか。
先入観が走る中、よく見てみると、トミー・ジョン氏(77)が新型コロナウイルスに感染していたというニュースであった。
記事によると、昨年12月に入院し、肺炎を患い一時は酸素吸入を受けたが、現在は回復しているというものだった。前を向ける知らせに胸を撫でおろした。
通算288勝を挙げた左腕は現在カリフォルニア州に住んでいるという。
野球ファンならば「トミー・ジョン手術」を聞いたことがない人はいないだろう。
肘を痛めた選手が、損傷した靭帯を切除し、その選手が持つ他の正常な腱の一部を摘出し移植することで患部の修復を図る。この術法を「側副靭帯再建手術」というが、初めてこの手術を受けた選手であるトミー・ジョン氏にちなんでこの名が付けられたことは有名だ。
手術後に“奇跡の復活”
1974年、当時ロサンゼルス・ドジャースで31歳の先発投手だったトミー・ジョンは7月17日に本拠地ドジャースタジアムで行われたモントリオール・エクスポズ戦で左肘の腱を断裂してしまう。
選手生命が絶望視されるほどの重傷だったが、当時のチームドクターであった故フランク・ジョーブ博士が考案したこの術法を選択し、奇跡の復活を遂げた。
怪我から1年9カ月後の1976年4月16日。敵地アトランタでのブレーブス戦で復帰登板を果たすと89年にニューヨーク・ヤンキースで現役を引退する46歳まで投げぬいた。
術後の14シーズンで登板は405試合。164勝を記録した左腕はまさに“不死鳥”と呼ばれた。
術法とリハビリ法を考案したジョーブ博士グループの知力に加え、その長く辛いリハビリに耐え抜いたトミー・ジョン氏の精神力がスポーツ医学の常識を変え、新たな時代を切り開いた。野球界は大きく変わった。
その後、この手術は投手だけでなく野手のものともなり、近年のメジャーではドジャースのコーリー・シーガー遊撃手やヤンキースのアーロン・ヒックス外野手も受けている。
手術の低年齢化に危惧の声も……
だがその一方で、米国では同手術を受ける選手の低年齢化が危惧されている。