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阪神・藤浪晋太郎の “数字的な欠点3つ”を吹き飛ばすポテンシャル… 復活要因は9回打ち切り?【週刊セパ記録】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2021/04/20 06:00
開幕投手を任された藤浪晋太郎(左)は、今季ここまで防御率1点台をマークしている
★今週の"ぴかイチ" 藤浪晋太郎★
好調、阪神投手陣の中でとりわけ目立つのが藤浪晋太郎だ。今季は初めて開幕投手に指名されたが、4試合で2勝、防御率1.90とエースの働きだ。
藤浪が二軍でくすぶっているときに、鳴尾浜で投球を至近距離で見たことがあるが、バシャっという音とともにミットに吸い込まれる剛速球は、二軍選手には打てるはずがないと思ったものだ。速さだけでなく、重さでも藤浪の速球は群を抜いている。
しかし同時に、数字的に見ると藤浪は欠点が多い投手でもある。
・制球の悪さ
藤浪は最多与四球を2回、最多与死球も2回。今季も防御率こそ1.90だが、1イニング当たりの安打、四球での走者を示すWHIPは1.44、先発投手は1.20以下で合格点とされるが、それを大きく上回っている。15四球はリーグ最多。しかも2死球。23.2回で38人もの走者を出している。それで5点しか失っていないのはある意味ですごいが、バックもベンチも気が気ではないだろう。
・失策後の失点の多さ
失策が絡んだ失点は、自責点にはならない。だから防御率には反映されないが、味方の失策から崩れる投手は信頼感がどうしても低くなる。失策が絡んだ失点は「失点-自責点」で導き出せる。
この数値2020年セ・リーグ5傑は以下の通り。
13 藤浪晋太郎(神)(47失点34自責点)
9 秋山拓巳(神)(45失点36自責点)
9 床田寛樹(広)(51失点42自責点)
7 西勇輝(神)(44失点37自責点)
7 遠藤淳志(広)(53失点46自責点)
阪神、広島の投手が多いのは、両チームの失策数がずば抜けて多いことと関係があるだろうが、藤浪のこの数値はワーストだ。中日の大野雄大と巨人の菅野智之はともに33失点30自責点の3だった。数字から見て、藤浪は失策から崩れることが多いのだ。
・本人の守備の問題
藤浪晋太郎の通算守備成績は、4月16日時点で156試合55刺殺150捕殺22失策の守備率.903、10回守備機会があれば1回失策するということだ。大野雄大、菅野智之の守備率はともに.975、西勇輝は.967、ずば抜けて長身の藤浪が体を折り曲げて打球を処理するのは危うさを感じる。そして藤浪自身の失策が失点につながることもしばしばある。
今季うまくいっているのは“早め継投”だから?
とはいえ、筆者は藤浪を"ディスっている"わけではない。そんなに問題がありながら、胸のすくような投球をする"異能の投手"だと言いたいわけだ。
今季、ここまでうまくいっているのは、比較的早い回でマウンドを降りているからだ。