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低迷続いたイングランドがやっとトンネル脱出? 育成強化が実ってW杯、EUROを制する日は来るか 

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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posted2021/04/09 06:00

低迷続いたイングランドがやっとトンネル脱出? 育成強化が実ってW杯、EUROを制する日は来るか<Number Web> photograph by Getty Images

新鋭が台頭しているイングランド。EUROやW杯で結果を残せるか

 テクニック、メンタル、さらに人としての魅力も重視し、旧態依然としていたフィジカル最優先に特大の疑問符を提示したのである。

若年層が急速に力をつけてきている

 以降、イングランドの若年層は急速に力をつけていった。

 2017年、アンダー17がこの年代のW杯権を制した。U-19はヨーロッパ選手権で優勝し、U-20は世界の頂点に立っている。U-17はフィル・フォデン(マンチェスター・シティ)、カラム・ハドソン・オドイ(チェルシー)、エミール・スミス・ロウ(アーセナル)、ジェイドン・サンチョ(当時シティ/現ドルトムント)、U-20にはアデモラ・ルックマン(当時エバートン/現フルアム)、ドミニク・キャルバート・ルーウィン(エバートン)といった、明日のイングランド代表を担うに違いない逸材が、数多く顔を揃えていた。

 また、準決勝に進出した2018年ロシアW杯では、当時23歳以下のマーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド)、ラヒーム・スターリング(シティ)、トレント・アレクサンダー・アーノルド(リバプール)が世界レベルを体験している。いまや彼らがトップランクの選手であることは、改めて言及するまでもない。

 さらに今年3月のW杯予選には、チェルシーのメイソン・マウント、リース・ジェイムズ、ウェストハムのデクラン・ライスといった21~22歳の選手、そして17歳のジェリード・ベリンガム(ドルトムント)も招集され、30代がひとりもいない陣容が大きな話題になっていた。

ようやく新鋭たちが出てきたが現実は……

 世界のフットボールは日進月歩だ。フランスは次から次へと優れたセンターバックを輩出し、南米大陸は相変わらずタレントの宝庫だ。日本もシュツットガルトの遠藤航のように、ヨーロッパのトップクラブが注目するタレントが現れた。

 先頃行われたU21ヨーロッパ選手権で、イングランドはグループリーグすら突破できなかった。現実はかくも厳しい。

 しかし、イングランド・フットボール全体のレベル向上は誰もが認めるところであり、来年に迫ったカタールW杯で上位進出、例えば66年大会の再現も決して夢物語ではないだろう。

 セットプレーではハリー・ケイン(トッテナム)とハリー・マグワイア(ユナイテッド)、ジョン・ストーンズ(シティ)が伝統のストロングヘッダーで貢献する。中盤でライス、フォデン、マウントのアイデアがきらりと光り、スターリング、ラッシュフォード、サンチョがスピードで相手DF陣を切り裂く。

 得意とする空中戦に加え、柔軟なアイデアと、マーカーを無力にするスピードも装備しつつあるイングランド……。世界を制する日が、いつかきっとやって来る。

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メイソン・マウント

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