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東京五輪を逃した34歳の“天才ランナー”佐藤悠基が鈴木健吾の日本記録を「更新可能な記録」と語る理由
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byAFLO
posted2021/04/07 11:03
昨年12月4日の日本選手権10000mで奮闘した佐藤(左)。駒大エースの田澤廉とも競り合った
伊藤達彦や小椋裕介を抜き去ったニューイヤー駅伝
結果は27分41秒84のサードベストで7位。日本トップクラスの証ともいえる27分台は5年ぶりのことだった。キャリア初の27分台は大学3年時の2007年で、社会人1年目の2009年に自己ベストとなる27分38秒25をマーク。27分台は8シーズンで記録しており、セカンドベストは2013年の27分39秒50になる。
日本選手権で佐藤は手ごたえをつかんだだけでなく、34歳にして、「自己ベストも狙えるのかな」という自信を得ている。その証拠というわけではないが、ニューイヤー駅伝は最長4区(22.4km)で9年ぶりの区間賞。日本選手権10000m2位の伊藤達彦(Honda)、ハーフマラソン日本記録保持者・小椋裕介(ヤクルト)を含む14人を抜き去った。
「チーム目標である『入賞』を達成できるように、少しでも順位を上げられればなという気持ちでした。日本選手権で刺激は入っていたので、スピードはある程度自信がありました。スタミナ面もマラソンをやってきたので、ちょっと練習すればメンタル的な不安はありません。4区は前半突っ込む選手が多いので、最初の5kmを抑えて、前半をうまくコントロールして走れば、後半で縮められる。その通りの走りができましたね」
今回は22.4kmを1時間4分00秒、前回の4区区間賞は22.0kmで1時間2分51秒。タイムを考えると、34歳で25歳と同程度のパフォーマンスを見せたことになる。それどころか、佐藤は今の方が良いトレーニングができているという。
「回復力は明らかに20代よりも落ちている」
「トレーニング自体は20代のときより今の方が全然いいですね。年齢はそこまで気にすることじゃないのかなという気はしています。ただ、衰えというと部分でいうと、回復力は明らかに20代よりも落ちている。そこはしっかりと受け入れてリカバリーには気を使っています。ケアはもちろんですけど、ポイント練習間のジョグも工夫しています」
佐藤はこれまでの経験をトレーニングに落とし込んでいるだけでなく、自費で高額な超音波治療器を購入して、日々のケアにも余念がない。シューズにもこだわりがある。脚の状態、メニュー内容を考慮して、ポイント練習ではナイキや中国のLI-NING(リーニン)を含む5つのモデルを使用しているのだ。単に速さを求めるのではなく、太く長く競技を続けるにはどうしたらいいのか。佐藤は常々考えてきた。