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巨人の“懸案事項”正捕手は「打撃の大城卓三」に…それでも小林誠司を“抑え”で起用する原監督の逆算戦略とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/04/02 14:55
今季開幕戦のDeNA戦で大城卓三はチーム1号となる勝ち越し3点本塁打を放った
小林の捕手としてのスキルの高さを生かす
背景にあるのはコロナ特別ルールだろう。
今季は特別ルールで9回打ち切りが採用されたことで、終盤の試合の組み立てが逆算できる。そこで打撃を重視して大城を先発で使って、終盤の最終打席が回ってきた時点か、ある程度、試合の行方が見えてきた時点で、勝ちゲームや同点の試合では、終盤の2回程度を小林にスイッチする。
試合終盤では打力は劣るが肩の強さ、際どいボールをストライクと判定しやすくキャッチングするフレーミング技術、リード面など小林の捕手としてのスキルの高さを生かす。
過去にはソフトバンクも甲斐拓也捕手の成長過程では、ベテランの高谷裕亮捕手が“抑え捕手”として、逃げ切り捕手を務めた時期もあった。また楽天時代の嶋基宏捕手やロッテ時代の細川亨捕手らも、同じ役割を担った時期があった。
神経をすり減らす終盤の1点を巡る攻防に、守り重視の捕手を起用するのは、もちろん適材適所でもあるのだ。
もちろん1人の捕手が全イニングを守れればそれは理想かもしれない。そうなれればベンチ入り捕手を3人から2人に減らして、その分、リリーフや代打要員をベンチ入りさせることもできる。
キャンプ時点では原監督もそこを模索していたのは確かだ。しかし開幕直前に9回打ち切りというコロナ特別ルールの実施が決まり、試合に出場する選手の数も当然、減ってくる。
人的余裕と逆算戦略が、大城と小林の2人の捕手力を最大限に生かすことにも繋がっていった。まさにこの併用こそが今季の巨人の“懸案事項”への答えだった訳である。
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