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【MotoGP開幕】絶対王者マルケスの不在で混戦必至 ホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティ…全チームに勝機十分の開幕戦プレビュー
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/03/26 17:02
今季ホンダに加入したポル・エスパルガロ。負傷から回復途上のマルケスに代わってエース級の活躍に期待がかかる
マルケスは昨年、シーズンが再開した7月の第2戦スペインGP決勝で転倒し、右上腕部を骨折。手術から4日後には連戦となった第3戦アンダルシアGPに復帰を果たして周囲を驚かせた。しかし、このときは腕の腫れがひどいために決勝をキャンセル。2週間後の第4戦チェコGPの復帰に向けてトレーニングを続けたが、今度は骨を固定しているチタン製のプレートが破損するというハプニングに見舞われた。そして再手術で骨折した部分が感染性偽関節になって骨がつかなくなった。シーズン中の復帰は不可能となり、昨年12月に3度目の手術を行っていた。
マルケスは今年2月からジムでのトレーニングを再開。3月に入ってからスペインとポルトガルでホンダのレーサーレプリカマシンRC213V-Sでサーキットランを実施し、にわかに復帰の気運が高まっていたが、復帰は早くても4月中旬の第3戦ポルトガルGPになりそうだ。
2013年にデビューしてから7年間で6度のチャンピオンを獲得した絶対王者マルケスの欠場により、昨年のMotoGPクラスでは全14戦で史上最多タイ記録となる9人のウィナーが誕生した。表彰台に立った選手は15人を数え、出場した選手の6割が表彰台に立つという大混戦だった。
それより前に9人のウィナーが生まれたのは16年のこと。その年はMotoGPマシンの性能に大きく影響するECU(エンジンコントロールユニット)が全チーム共通になり、タイヤがブリヂストンからミシュランに替わったことも重なって、どのメーカーもマシン作りに苦戦したことが要因だった。ただ、16年は19戦が行われたのに対し、昨年は14戦でもウィナーの数は同じ。つまりは16年以上の大混戦で、あらためてマルケスの強さを証明するシーズンとなった。
虎視眈々と優勝を狙うライダーたち
そのマルケスを擁するホンダに、今季KTMから加入したポル・エスパルガロの活躍に注目が集まる。エスパルガロはMoto2時代からマルケスとは強烈なライバル関係にある。MotoGPクラスではヤマハからデビューし、昨年まで在籍したKTMではエースとして活躍したエスパルガロは、マルケスが圧倒的な速さと強さを見せているホンダでどんな走りをするのか。彼の真価が問われるシーズンとなる。
日本のエース中上貴晶にも大きな期待が寄せられる。3年目となった昨シーズンは、MotoGPクラスで初めてのポールポジションをはじめ4回のフロントローを獲得し、一躍トップライダーの仲間入りを果たした。決勝レースでは2度の4位を最高位に、完走したレースでは常にトップ10入りしたが表彰台獲得は果たせず。4年目の今年は、デビューしてから初めてワークスチームと同じ最新型のマシンで戦う。