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「良い流れが来ているのかな」京口紘人27歳は米国で“軽量級スター”になれるか【世界的プロモーターと契約】
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroto Kyoguchi
posted2021/03/13 06:01
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クセル・アラゴン・ベガ(メキシコ)との防衛戦に臨む京口紘人
今後、京口はアメリカと日本を行き来して試合をこなす予定で、米リングにも頻繁に立つ可能性がある。今をときめくサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)の名参謀として知られるエディ・レイノソをマネージャーに迎えた経緯から、いずれカネロの試合のアンダーカードに起用される線も十分だ。
「カネロは好きな選手だし、参考にしているところもあります。攻守一体というか、ディフェンスもすごいスキルは高いですし、上下打ち分けだったり、ボディもアッパーもうまい。(チームカネロとの合同練習は)あるかもしれないですね。興味あります」
京口本人もこのように提携に前向きであり、本当に様々な意味で可能性が広がる新契約であることは間違いあるまい。
「スーパーフライ級は現時点では現実的ではない」
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ここで予め断っておくと、京口が今後も連勝街道を走ることは想定内であっても、欧米でスターダムに到達するのは決して容易でない。アメリカでも一部のマニアから「ダイナマイト・ボーイ」の愛称で親しまれる王者の実力が足りないのではない。問題は京口が戦う階級だ。
今の京口にとって、主戦場とするライトフライ級が適正階級だという。将来どこまで上げられると思うかを尋ねると、「(昇級は)フライ級までですかね。スーパーフライ級は現時点では現実的ではないという思いがあります」と正直に打ち明けた。だとすれば、13日の興行メインで対戦するスーパーフライ級のフアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)とローマン・ゴンサレス(帝拳・ニカラグア)、あるいはシーサケット・ソールンビサイ(タイ)といった強豪との対戦も難しいということ。そうなると、いかにマッチルームといえど、京口にビッグネームとの戦いを提供するのは容易ではないというのが正直なところだろう。
京口自身もそうした現実はもちろん認識しており「海外、アメリカで戦えるボクサーになりたいですし、世界的にも注目されるようなボクサーになりたい。(ただ、)このクラスでは難しいとも思うんですけど」と素直に語っていた。
そんな状況であれば、今後は一戦一戦の内容が何よりも問われてくるのだろう。日本からの新たな“輸入品”が、異国で存在感と魅力を誇示したければ、やはり軽量級離れをした強い勝ち方が必須であることは言うまでもあるまい。
今回対戦するアラゴン・ベガは戦績14勝(8KO)3敗1分という短躯の右ファイター。昨年、新型コロナウイルス感染という試練を味わった京口のコンディションが万全に近ければ、タイトル防衛でそれほど怖い相手ではないのかもしれない。ただ、しぶとさが武器のアラゴン・ベガにKOで圧勝するのは容易とは思えず、渡米初戦でそれを成し遂げられるかどうかが見どころとなってくる。