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ボクシングの新階級「ブリッジャー級」誕生にファンも冷ややかな視線 “歓迎派”の日本選手の声は?
posted2021/03/01 06:00
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph by
Getty Images
WBC(世界ボクシング評議会)がヘビー級の下に「ブリッジャー級」を新設したのは昨年11月のランキングからだった。体重が200ポンド(90.72kg)~224ポンド(101.6kg)の階級は、聞いたことがないというファンも多いはず。王座はいまだ空位のままだ。
ミニマム級からヘビー級まで17階級に細分化されただけでもうんざりなのに、さらに18番目の階級を作る必要がどこにあるのか。ボクシング・ファンは、ビジネス的側面が強い新階級誕生と冷ややかな目でみている。
もっともらしい「大義名分」はある。近年ヘビー級が大型化して、同じヘビー級でも軽いヘビー級にはハンデが大きすぎて危険だというのだ。
それでもどこか白けた思いがするのはなぜか。あまりに歴史を顧みない姿勢が癪にさわるからか。モハメド・アリやマイク・タイソンら歴代ヘビー級の名王者たちのほとんどが王座獲得時の体重はこの階級内におさまり、今彼らが現役だとしたらヘビー級チャンピオンと呼ばれないのだ。そんなことがあっていいのか。
新階級に好意的な人たちもいる
しかし、この新階級に好意的な人たちもいることを明記しておかなくてはフェアではあるまい。「相手が2m、110kgを超えると、やはりフィジカル面でのハンデを感じる」と言うのは、現日本ヘビー級チャンピオンの上田龍である。
日本第3代ヘビー級王者は190cm、103kgと日本人の中では目立つほどの大柄で、以前だったらアリに近い理想的な体格だ。しかし、現WBC王者のタイソン・フューリーは124kg、他の3団体統一王者のアンソニー・ジョシュアは109kg。彼らに挑むには上田ならずとも相当なハンデを覚悟しなければならない。
ライトヘビー級の元全日本選手権王者で、ヘビー級でのプロデビューを目指す但馬ミツロも、「(世界タイトルを)狙える階級が一つ増えた」と新階級歓迎派だ。
上田も但馬も今のヘビー級では小柄で、新設のブリッジャー級は一番体にフィットする階級かもしれない。
それでも上田は「チャンスがあればどこでも戦いたい」と言う。そうこなくては。柔道なら無差別級、相撲も事実上の無差別級、ボクシングのヘビー級も体重無制限が魅力だったはず。小よく大に挑む選手がいなくなっては面白くない。